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副作用被害救済制度の不支給例から服薬指導を考える:チアマゾール編

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医薬品副作用被害救済制度において、医薬品の適正な使用ができていなかったばかりに、不支給となってしまった例から、処方監査で注意すべき点や服薬指導で確認すべき内容などを考えたいと思います。

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【医薬品副作用被害救済制度の対象】

医薬品副作用被害救済制度の対象は、「医薬品を適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による疾病(入院治療を必要とする程度のもの)、障害(日常生活が著しく制限される程度の状態のもの)及び死亡」となります。

詳細については、PMDAの医薬品副作用被害救済制度の解説ページをご確認ください。
http://www.pmda.go.jp/kenkouhigai_camp/index.html

ちなみに平成23年度~平成27年度において、事例6469件のうち、不支給と決定されたのは1003件。そのうち不支給理由が「使用目的または使用方法が適正とは認められない」であったのは308件になります。

【不支給例の多い薬:チアマゾール(商:メルカゾール)】

まずはチアマゾールの警告の内容を以下に記載します。(メルカゾール錠5mg添付文書より)

警告
1.
重篤な無顆粒球症が主に投与開始後2ヶ月以内に発現し、死亡に至った症例も報告されている。少なくとも投与開始後2ヶ月間は、原則として2週に1回、それ以降も定期的に白血球分画を含めた血液検査を実施し、顆粒球の減少傾向等の異常が認められた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、一度投与を中止して投与を再開する場合にも同様に注意すること(「重大な副作用」の項参照)。

2.
本剤投与に先立ち、無顆粒球症等の副作用が発現する場合があること及びこの検査が必要であることを患者に説明するとともに、下記について患者を指導すること。
(1)無顆粒球症の症状(咽頭痛、発熱等)があらわれた場合には、速やかに主治医に連絡すること。
(2)少なくとも投与開始後2ヶ月間は原則として2週に1回、定期的な血液検査を行う必要があるので、通院すること。

<不支給例>
甲状腺機能亢進症のためにチアマゾールを服用し、無顆粒球症を発症。
投与開始以降、無顆粒球症が認められるまで約7週間血液検査が実施されていなかったため適正な使用とは認められなかった。

【この事例に対して薬剤師ができることは何だろう?】

まずは、初回投与時に処方日数を確認することが大切です。原則として2週間に1回検査されるなら、処方日数が2週間であるか確認することです。
次に、もし医師が血液検査を実施していなかった時に、「早くに副作用を発見すること」もしくは「患者さん自身が医師に相談できるよう注意すべき副作用の症状をしっかり説明すること」だと思われます。
副作用の症状については、上記にも記載しており、製品の箱内にも注意書きの紙があるので、意識しておけば説明可能だと思います。

その他には、併用薬にチアマゾールの作用を増強するような薬剤が追加になっている場合には、改めて患者さんに注意を促す必要があるかと思います。
ここで、チマゾールの作用を増強する可能性がある薬剤を知っておくために、チアマゾールの併用注意の薬をまとめたいと思います。
・・・
添付文書を調べた結果、チアマゾールが他の薬の作用を増強したり、もしくは血中濃度を上げる可能性はあっても、チアマゾールの作用を増強するような薬剤の記載はありませんでした
<せっかくなのでチマゾールの併用注意薬まとめ>
●クマリン系抗凝血薬:ワルファリンカリウム
甲状腺機能が亢進しているとクマリン系抗凝血薬の効果は増強する。チアマゾールの投与により甲状腺機能が正常化すると、増強されていたクマリン系抗凝血薬の効果が減弱するとの報告あり

●ジギタリス製剤:ジゴキシン等
甲状腺機能亢進時には、代謝・排泄が促進されているため、ジギタリス製剤の血中濃度が正常時に比較して低下する。チアマゾール投与により甲状腺機能が正常化すると、ジギタリス製剤の血中濃度が上昇するとの報告あり

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参考:
医薬品副作用被害救済制度に支給・不支給決定の状況と適正に使用されていない事例が多く見られる医薬品について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/www1/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/296-1.pdf

医薬品副作用被害救済制度の概要と救済事例にみる医薬品情報の重要性(PMDA)
https://www.pmda.go.jp/files/000214659.pdf

行政サイドからみた医薬品副作用被害救済制度の最近の動向と注意点
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshowaunivsoc/75/4/75_380/_pdf

医薬品・医療機器等安全性情報No.328
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000185081.pdf

PMDAからの医薬品適正使用のお願い(No.5 2011年12月)
https://www.pmda.go.jp/files/000143548.pdf