病態・薬物治療

【病態・薬物治療】虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)

今回は、虚血性心疾患の狭心症と心筋梗塞についてです。
ちなみに虚血性心疾患とは、心筋の酸素需要と供給のバランスが崩れ、心筋が酸素不足に陥った状態です。

狭心症

狭心症の分類・種類

狭心症は下の表に示すように、様々な観点から分類される。

発作機序に
よる分類
器質性狭心症 動脈硬化などにより冠動脈が狭窄している。主に労作により発作が誘発される。
なお。動脈硬化は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が血管内皮下に蓄積することから始まり、粥種(プラーク)が形成されることで生じる。
冠攣(れん)縮性
狭心症
あるきっかけから冠血管のひきつけ(冠攣縮)が生じ、それによる冠血流量の低下で発作が生じるもの。
なお、冠攣縮は冠動脈の95%以上の狭窄を起こすため、安静時でも酸素供給不足になる。ちなみに冠攣縮は、交感神経が優位に働く朝方に多い
攣縮性狭心症の1つに異型狭心症がある。異型狭心症は心電図でST波が上昇するのが特徴である。
発作の誘因による分類 労作性狭心症 精神的ストレス、労作などがきっかけで発作が誘発されるもの。器質性狭心症が病態になっていることが多い。
安静時狭心症 横になって安静にしている時に発作が起こりやすいもの。冠攣縮性狭心症が病態になっていることが多い。
臨床経過による分類 安定狭心症 発作が起こるきっかけ(精神的ストレス、労作など)の閾値が一定しており、その閾値を超えると発作がおこる。
不安定狭心症 短時間のうちに発作が悪化し、急性心筋梗塞や突然死に至る可能性が高い。

狭心症の症状

・発作時に、前胸部に胸痛を訴える。発作の持続時間は、多くの場合数分である。
硝酸薬の頓服などで症状は消失する。
・硝酸薬の頓服で症状が消失しない場合は、急性心筋梗塞や不安定狭心症などの急性関症候群や、あるいは虚血性心疾患以外を考える必要がある。

筆者の勤める薬局において、硝酸薬であるニトロペン舌下錠が処方された患者様は、「胸の痛みがあった時に使って、痛みが改善したら狭心症だと言われた」とおっしゃる方がよくいます。医師も狭心症の判断で使用しているようです。

・安静にしても症状が消失しない場合や、労作との関連性がなく15~30分持続する狭心痛が見られる場合には、心筋梗塞への移行が考えられる。

狭心症の検査

心電図検査を行う。発作時にST波の低下を認める(異型狭心症ではST波が上昇する。)
しかし、非発作時には心電図の異常を認めないので、労作性狭心症に対しては、運動負荷試験を行い心電図を測定する。安静時狭心症に対しては24時間連続記録するHolter心電図を用いる。

・経皮的カテーテルを用いて冠動脈に造影剤を注入する冠動脈造影が行われる。

狭心症の薬物治療

まずは簡単に、各薬剤が狭心症に対してどのような効果が期待されているか以下の表にまとめます。

狭心症発作の抑制 心筋梗塞発症・心臓死の抑制
硝酸薬
Ca拮抗薬
β遮断薬
抗血小板薬
ACE阻害薬/ARB
スタチン系

次に狭心症発作の抑制で用いられる硝酸薬、Ca拮抗薬、β遮断薬の特徴をまとめます。

薬剤名
成分名(商品名)
特徴
【硝酸薬】
ニトログリセリン
(商:ニトロペン舌下錠、
ミオコールスプレー、
ニトロダームTTSなど)

硝酸ソルルビド
(商:ニトロール、
フランドルテープ)

・労作性および冠動脈攣縮による狭心症に有効
速効製剤は発作寛解、持続製剤は発作予防に用いる
・耐性が生じることがある。添付文書には休薬期間を設けることで耐性を軽減できる可能性がある旨が記載されている。
勃起不全治療薬であるホスホジエステラーゼ(PDE)-5阻害薬(成分名:~aフィル)、閉塞隅角緑内障と禁忌
・血圧低下によるふらつきには注意
【β遮断薬】
アルプレノール
(商:スカジロール)

ブフェトロール
(商:アドピオール)

器質的狭窄病変を有する労作性狭心症が適応

攣縮性狭心症は増悪させることがある。

【Ca拮抗薬】
ベラパミル(商:ワソラン)

ジルチアゼム(商:ヘルベッサー)

アムロジピン(商:ノルバスク)

冠攣縮性狭心症薬の第一選択

・ジルチアゼム、ベラパミルは労作性狭心症にも奏功

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心筋梗塞

心筋梗塞は、冠動脈の閉塞または高度な狭窄により血行障害をきたし、心筋虚血が一定時間持続した結果、心筋細胞が壊死に陥る。(狭心症は細胞の壊死を認めない状態です。)
一般に側副血行路が豊富な場合でも発症後6時間を超えると不可逆的な細胞障害を起こす。

心筋梗塞の症状

発症とともに、激烈な胸痛を訴える。心筋梗塞における胸痛は、通常20分以上持続し、硝酸薬では症状は改善しない
全身症状としては、不安、冷や汗、顔面蒼白、吐き気などがみられる。

検査

典型的な心電図変化として、
1.T波増高
2.ST上昇
3.異常Q波またはR波減高
4.T波陰転(陰性T波)
が経時的にみられる。

心筋梗塞発症時には、以下の検査値が増加する。
・クレアチンホスホキナーゼ(CPK)
・心筋特性の高いCK-MB
・筋原線維を構成するトロポニンT
・白血球
・AST ※試験ではALTでひっかける可能性あり。
・LDH

治療

<発症直後>
鎮痛にはモルヒネの静注
心室性不整脈にはリドカインの静注

<再灌流療法>
心筋梗塞発症のごく早期に閉塞冠動脈を再灌流させ、梗塞範囲の拡大を防ぐ目的で行われる。
血栓溶解薬には、血栓との親和性が高い組織型プラスミノーゲンアクティベータ(t-PA)であるアルテプラーゼなどを用いる。
健康保険上の適応は、発症後6時間以内である。

アルテプラーゼの保険適応上の効能効果は
心筋梗塞に対しては発症後6時間以内だが
虚血性脳血管障害急性期に対しては発症後4.5時間以内である。
試験では数字を逆にしてくる可能性があります。

狭心症と心筋梗塞の違い

国家試験などでも狭心症と心筋梗塞の説明文を入れ替えてひっかけてくることがあるので、簡単に違いをまとめます。

狭心症 心筋梗塞
心筋は壊死しない

胸痛は数分程度

胸痛は硝酸薬の頓服で消失

心電図でSTは基本下低下する
(ただし、異型狭心症はST上昇

心筋が壊死に陥る

胸痛は20分以上持続

胸痛は硝酸薬の頓服で消失しない

心電図でSTは上昇する