今回は、重症筋無力症の病態・薬物治療についてまとめます。
重症筋無力症の病態
概要
重症筋無力症は神経筋接合部のシナプス後膜上に置けるニコチン性アセチルコリン(ACh)NM受容体に対する自己抗体(抗ACh受容体抗体)により神経接合部の刺激伝導系が障害される自己免疫疾患であり、20~40歳代の女性に好発する
症状
筋力の低下による様々な障害が現れる特に外眼筋が障害されやすいため初期症状として最も頻度が高いのは眼瞼下垂(がんけんかすい)や復視などの症状でありその他に四肢筋力低下、嚥下障害、重症例では呼吸麻痺を呈する。 また症状には日内変動があり午前は軽度で午後や夕方になると増悪する傾向がある。
練習問題(参考:第109回 問56)
●神経接合部のアセチルコリン受容体に対する自己抗体が産生されることにより、筋力低下をきたす自己免疫疾患はどれか。1つ選べ。
1.イートン・ランバート症候群
2.重症筋無力症
3.ギラン・バレー症候群
4.進行性筋ジストロフィー
5.筋委縮性側索硬化症
正解は2
ギランバレー症候群の話はコチラになります。
検査
検査 | 特徴 |
塩化エドロホニウム試験 (テンシロン*テスト) |
緩徐に静脈内注射し指標とすべき症状の改善が得られたら陽性とする。塩化エドロホニウムは即効性短時間持続のコリンエステラーゼ阻害薬であり治療には用いない。 |
抗アセチルコリン受容体抗体 | 80~85%の症例で陽性を示す。 |
抗筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体 | 数%の症例で陽性を示す |
*テンシロンはエドロホニウムの外国での商品名。日本における商品名はアンチレクス。
重症筋無力症に治療
コリンエステラーゼ阻害薬
ピリドスチグミン(商:メスチノン)、アンベノニウム(商:マイテラーゼ)、ネオスチグミン(商:ワゴスチグミン)、ジスチグミン(商:ウブレチド)による神経筋節後部ACh含量増加
コリンエステラーゼ阻害薬の成分名のゴロは別ページにまとめていますので、そちらを参考にしてください。
![可逆的コリンエステラーゼ阻害薬 薬理ゴロのイラスト](https://kusuri-manabu.com/wp-content/uploads/2019/11/【副交感神経興奮薬】可逆的コリンエステラーゼ阻害薬 薬理ゴロイラスト-320x180.jpg)
副腎皮質ステロイド性薬
プレニゾロン、メチルプレドニゾンなどを使用する。胸腺摘除術と併用する。
免疫抑制薬
タクロリムス(商:プログラフ)やシクロスポリン(商:サンディミュン、ネオーラル)を使用する。
血液浄化療法
血中から抗ACh受容体抗体を排除する。副腎皮質ステロイド性薬や免疫抑制薬で免疫を抑制状態にしてから施工する。
練習問題
練習問題は、第107回薬剤師国家試験の問58です。
![](https://kusuri-manabu.com/wp-content/uploads/2022/05/107回 問58 重症筋無力症.jpg)
上記での記載を参考にすると、答えは4:眼瞼下垂です。