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糖尿病におけるシックデイについて

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糖尿病治療薬を詳しく勉強したい薬剤師・薬学部生向けに
糖尿病診療ガイドライン2019(以下ガイドライン)
を参考に糖尿病治療薬の情報をまとめています。

今回は「糖尿病におけるシックデイ」についてです。

シックデイについて

糖尿病患者が、感染症などによる発熱、下痢、嘔吐や食欲不振のために食事が摂れない状態をシックデイと呼ぶ。様々なストレスに対して、カテコールアミン、コルチゾールなどのインスリン拮抗ホルモンが増加することで高血糖となることが多い。そのため、高血糖・ケトアシドーシスなどを回避するための特別な対応が必要となる。日ごろから、シックデイの際に医療機関に相談できる体制を確立しておく。

シックデイ時の対応について

シックデイの際には、脱水予防のため、十分に水分を摂取し、できるだけ摂取しやすい形(お粥、麺類、果汁など)で糖分を摂取し、エネルギーを補給する。一方、食事摂取不良であるからといって、インスリンや経口血糖降下薬を中断すると著明な高血糖となる危険性がある。そのため、日ごろから、決して自己判断で中断しないように指導することが肝要である。特に、食事摂取困難であれば、早期に医療機関に連絡し指示を受けるように指導しておく。また、平素から毎日自分の体重を測定するよう指導しておくと、おおよその脱水の程度を推定することができる。

速やかに医療機関を受診するべきとき

発熱、消化器症状が強いとき
24時間にわたって経口摂取ができない/著しく少ないとき
③血糖値350mg/dL以上の持続血中ケトン体高値、尿中ケトン体強陽性のとき
意識状態の悪化がみられるとき
来院時には必ず血中、尿中ケトン体の測定を行う。

シックデイに際しての血糖降下薬の使い方の例

実際には、病状、普段の血糖コントロール状況現在の食事・水分の摂取状況、食事療法の遵守状況なども勘案し、個別にインスリンや経口血糖降下薬の使用量を医療機関が指示する。

インスリンの場合

中間型または持効型インスリン注射の継続を原則とする。
②追加インスリンは、食事量(主に糖質)、血糖値、ケトン体に応じて調整する。
③頻回に血糖値/ケトン体を測定する。

経口血糖降下薬の場合

①インスリン分泌促進薬[SU薬速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)]:食事摂取不良である場合は調整が必要なため、医療機関に連絡することが望ましい。診察時の状態により中止、減量を判断する。
②αグルコシダーゼ阻害薬消化器症状の強いときには中止する。
ビグアナイド薬:シックデイの間は中止するように普段から指導しておく。受診時には、
投薬の変更などを考慮する。
④チアゾリジン薬:シックデイの間は中止することが可能である。
⑤インクレチン関連薬:シックデイの間の使用については、現在、コンセンサスが得られていない。GLP-1(glucagon-likepeptide1)受容体作動薬については、血糖自己測定値を参考に、インスリンへの切り替えも含めて対応する。
SGLT2(sodiumglucosecotransporter2)阻害薬:シックデイの間は、中止するように指導しておく。