今回は統合失調症の病態・薬物治療のまとめました。
暗記が苦手な薬学部生にみてほしい。
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統合失調症の病態
概要
主に思春期から青年期 (15~35歳)にかけて好発し、特徴的な思考障害、自我障害、感情障害、人格障害などを示す内因性精神疾患である。発症に遺伝的素因が関与しており、症状は増悪と軽減を繰り返す。生涯有病率は0.8~1%前後である。原因は不明であるが、対症療法の効果から次のような説が考えられる。
●統合失調症の成因
成因 | 特徴 |
ドパミン仮説 | ・中脳辺縁系のドパミン神経の機能亢進により陽性症状が生じる ・中脳皮質系のドパミン神経の機能低下により陰性症状が生じる |
グルタミン酸仮説 | 大脳皮質のグルタミン酸神経系の機能低下が主に陰性症状の発現に関与する |
セロトニン仮説 | セロトニン作動性神経系の亢進は陰性症状に関与する |
神経発達障害仮説 | 大脳の分化の段階で生じた脳の障害に、 思春期以降のストレスが加 わることが発症に関与する |
<ゴロ・覚え方>
●縁側ドパドパいっぱい太陽あたる、皮は日陰に。
「縁側」中脳辺縁系
「ドパドパいっぱい」ドパミンに機能亢進
「太陽」陽性症状
「皮」中脳皮質系(のドパミン神経機能低下で)
「日陰」陰性症状
●セロリとニンジン食べすぎ、やる気でないし考えたくない
「セロリとニンジン」セロトニン
「食べすぎ」機能亢進
「やる気でないし考えたくない」陰性症状(意欲低下や思考障害など)
※有名Youtuberの東海オンエアで、生のセロリとニンジンを食べる罰ゲームがある。知っている人にはハマるゴロだと思います。
グルタミン酸神経系については、テンションが上がる神経系と覚えておく。
よってグルタミン酸神経の機能低下で陰性症状
注意すべきはセロトニン仮説!
統合失調症の陰性症状はセロトニン仮説(セロトニンの機能亢進)が言われている。しかし、似たような症状のうつ病ではモノアミン仮説(セロトニン系、ノルアドレナリン作動性神経の機能低下)が言われている。
ここはすごく紛らわしいので、あまり理屈で覚えず、暗記の方が楽かも。
<覚え方>
もし、薬理を覚えている人は、
統合失調症に用いるSDA(セロトニン・ドパミンアンタゴニスト)はセロトニンの働き抑える。→逆に病態はセロトニン亢進:セロトニン仮説)
うつ病は、SSRI(セロトニン再取り込み阻害)でセロトニン働く→逆に病態はセロトニンの機能低下:モノアミン仮説
と関連づけると覚えやすいです。
症状
統合失調症の症状には陽性症状と陰性症状がある。 陽性症状は時間の経過により改善することも多く、それとともに陰性症状が目立ってくる。
●陽性症状と陰性症状
分類 | 特徴 |
陽性症状 (主観症状) |
・妄想、幻覚、 思考障害 (支離滅裂な思考)など ・陽性症状は急性期、慢性増悪期に見られ、薬物治療の反応は良好 ・急速に進行する |
陰性症状 (客観症状) |
・無為、自閉、感情の平板化、思考障害 (思考の貧困)、意欲低下など ・慢性期の主症状で、薬物治療の反応は不良 ・緩徐に進行する |
●症状と特徴
症状 | 特徴 |
思路の障害 | 思考の進行が突然停止する (思考途絶)、 話のまとまりがなくなる (連合弛緩)、滅裂思考 |
思考内容の障害 | ・さまざまな妄想が生じる ・「みんなが自分の方を見ている」 のように見ず知らずの他人を自 分と関係づける (関係妄想)、「食物に毒が入っている」 などありもしないことを妄想する (被害妄想)、「自分は世界を変える使命 を与えられた人間だ」 など根拠なく現実にそぐわない着想が浮かぶ(妄想着想) |
幻覚・幻聽 | ・ほとんどは幻聴 ・「誰かが何かを話しかけてくる」、幻聴に答えるかのように「独り 言をいう」 「突然笑いだす」 など (対語性幻聴) |
自我障害 | 自我と外界との境界が不鮮明になる ・自分が考え行動するという自我の意識が薄れ(人症)、他の誰 かに操られる(させられ体験) |
感情障害 | 感情鈍麻、感情の平板化、自閉 |
意欲・行動の障害 | ・急性期:緊張病性昏迷 (意識があるが、ほとんどかない)、緊張病性興奮(著しく興奮し、 衝動行為を示す) ・慢性期: 意欲減退、自発性欠如が進み終日何もしない |
検査
特異的な検査所見はなく、患者は病識がないことが多い。統合失調症の診断は患者との面談や観察により症状を記載し、経過、病歴、生活歴など様々な情報を聴取して行う。最近では、 ICD-10、DSM-5によって診断されることが多い。
重症度尺度として、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS Positive and Negative Syndrome Scale)、簡易精神症状評価尺度(BPRS Brief Psychiatric Rating Scale)などがある。
統合失調症の治療
非定型抗精神病薬による薬物療法が主体であり、急性期治療、急性期に引き続く回復治療、病状が安定している時期の安定期治療がある。統合失調症の治療では、薬を飲まなくなると再発し重篤化するだけでなく、入院頻度が高くなるため治療のアドヒアランスを高めることが重要である。
統合失調症治療薬の薬理
1.抗精神病薬の種類
抗精神病薬は定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬に分類される。
●定型と非定型
分類 | 特徴 |
定型 | 陽性 (急性期) 症状に有効で副作用として錐体外路障害を起こす、いわゆる一般的なD2受容体遮断薬の有する作用を基本とした薬物 |
非定型 | 錐体外路障害は弱く、陰性症状にも有効で第一選択薬となっている |
統合失調症治療薬は、 神経遮断薬あるいはメジャートランキライザーともいわれ、統合失調症の症状を改善する薬をいう。 フェノチアジン系やプチロフェノン系に代表される定型抗精神病薬と、セロトニン・ドパミンアンタゴニスト (SDA:serotonin dopamine antagonist)や多元受容体作用抗精神病薬 (MARTA: multi-acting receptor targeted antipsychotics)などの非定型抗精神病薬が用いられている。
フェノチアジン誘導体は、フェノチアジン骨格を有し、側鎖脂肪族のクロルプロマジン、側鎖ピペラジン型のフルフェナジン(効力は最強)が主要なものである。
プチロフェノン誘導体は、合成麻薬性鎮痛薬であるペチジンから誘導された化合物である。 薬理作用はクロルプロマジンに類似する。
各種薬剤の薬理作用については、ゴロと一緒に別ページにまとめていますので、そちらを参考にしてください。
2 副作用
副作用 | 特徴 | |
神経症状 | 薬剤性 パーキンソン 症候群 |
中枢性抗コリン薬やアマンタジンを用いる (レボドパは無効) |
悪性症候群 | ・無動症、筋強直、自律神経症状などの前駆症状を経て、 40℃以上の過高熱となり、昏睡、蒼白、呼吸困難、脱水、虚脱、 痙攣を起こし、死に至ることがある ・筋逸脱酵素として、血中CK 値の上昇が見られる ・投薬を中止し、ダントロレン(商:ダントリウム)を投与する。ブロモクリプチンの併用も効果がある |
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遅発性 ジスキネジア |
・大量長期投薬後、急な減量や中止をきっかけに発症する ・口、舌、顔面に現れる常同性不随意運動 |
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急性 ジストニア |
筋攣縮、 痙攣発作 | |
アカシジア | 長時間静座不能 | |
自律神経症状 | ・α1受容体遮断作用 起立性低血圧、 反射性頻脈など ・抗コリン作用 口渇、鼻閉、便秘、 排尿障害など |
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内分泌症状 | ・定型薬: 高プロラクチン血症による乳漏症、無月経、女性化乳房など ・非定型薬:高血糖、肥満 |
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