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歯科にてアモキシシリンが2g(2000mg)処方された例

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今回は、歯科でアモキシシリン(先:サワシリン)が大量で処方された例についてです。

アモキシシリンが歯科でよく処方される例としては
サワシリン錠250mg 1回1錠 1日3回毎食後 3日分(または5日分)
などです。

しかしその患者さんには
サワシリン錠250mg  1回8錠 1回分 歯科処置1時間前
で処方されていました。

処方意図

結論から言うと、感染性心内膜炎(IE)の予防です。

IEは,弁膜や心内膜,大血管内膜に細菌集蔟を含む疣腫(vegetation)を形成し、菌血症、血管塞栓、心障害などの多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患である。IEはそれほど発症率の高い疾患ではないが,いったん発症すると、的確な診断のもと、適切に奏効する治療を行わなければ多くの合併症を引き起こし,ついには死に至る。
●感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン2017年改訂版(以下、ガイドライン)より

ガイドラインp55では、
高リスク心疾患患者に対して、抜歯などの菌血症を誘発する歯科治療の術前には予防的抗菌薬投与を強く推奨する。
と記載があります。
なお高リスク心疾患患者は
1)人工弁術後
2)IE の既往
3)姑息的吻合術や人工血管使用例を含む未修復チアノーゼ型先天性心疾患
4)手術,カテーテルを問わず人工材料を用いて修復した先天性心疾患で修復後6ヵ月以内
5)パッチ,人工材料を用いて修復したが,修復部分に遺残病変を伴う場合
6)大動脈縮窄
を含みます。

使用する薬剤

歯科処置前の抗菌薬の標準的予防投与法が、ガイドラインp55,p66に記載があったのでまとめました。

※1:または、体重あたり30mg/kg
※2:なんらかの理由でアモキシシリン2gから減量する場合は、初回投与5~6時間後にアモキシリン500mgの追加投与を考慮する。

なお、ガイドラインでは基本的にはアモキシシリン2gの術前1時間以内の経口投与が推奨されています。そこから、βラクタム系薬のアレルギーがある場合や経口投与不可能な場合に上記表の薬を考慮していくようです。

参考:
感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)