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薬剤耐性乳酸菌とその効能・効果に含まれない抗菌薬

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今回は、ビオフェルミンRやラックビーRなど「R」のつく生菌製剤について記事を書きました。

【Rの意味と効能・効果】

ビオフェルミンRのIFによると、「R」は「耐性、抵抗」を意味する「Resistance」の頭文字で、抗生物質・化学療法剤に耐性をもった菌を成分であることを意味するとのことです。
効能・効果は「下記抗生物質、化学療法剤投与時の腸内細菌叢の異常による諸症状の改善:ペニシリン系、セファロスポリン系、アミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ナリジクス酸」である。

ここで、注意したいのは、抗生物質はすべてではなく、一部の分類に絞られていることです。
例えば、ニューキノロン系は効能・効果には入っていません。

【どうして絞っているのか?】

上記抗生物質に絞っている理由として、調査する前に2つの可能性を思いつきました。
1.菌が耐性を有していないため効能・効果から記載を外している。
2.耐性乳酸菌が承認された後の抗生物質は記載されていない。

調査した結果、
まず、耐性乳酸菌製剤で初めに発売されたエンテロノンRは1969年1月5日に発売。
世界初のニューキノロン系のバクシダールは1984年3月17日に発売。
発売当初はニューキノロン系への耐性が検討されていない可能性がおおいにあると感じました。

さらに調査すると、たどり着いたのが「長崎大学医学部・歯学部付属病院における整腸剤適正使用への取り組み」という文献です(下の参考にリンクをはります)。
その文献では、「耐性乳酸菌製剤は発売後10数年経過しており、その間に開発された抗菌薬に対する薬剤感受性は明らかではない」と記載があります。
さらに、あらためて耐性乳酸菌製剤2種の抗菌薬に対する薬剤感受性を検討した結果

1:添付文書に記載のあるペニシリン系、セフェム系、アミノグリコシド系抗菌薬に対しては耐性が認められた。
※なお、検討したのは
ペニシリン系:アンピシリン、ピペラシリン
セフェム系:セフタジジム、セフトリアキソン、セフェピム
アミノグリコシド系:ゲンタマイシン、アルベカシン、

2:テトラサイクリン系は添付文書で記載があるが、テトラサイクリン系のミノサイクリン(商:ミノマイシン)では耐性が認められなかった。
※ミノマイシンの薬価収載年は最も古い剤形で1974年であり、耐性乳酸菌製剤の発売後である。

3:添付文書上記載のないニューキノロン系、グリコペプチド系抗菌剤に対しては耐性を認めなかった。
※なお、検討したのは
ニューキノロン系:レボフロキサシン、シプロフロキサシン、プルリフロキサシン、ガチフロキサシン
グリコペプチド系:バンコマイシン、テイコプラニン

調査の結果、絞っている理由は不明ですが、薬剤耐性乳酸菌製剤はニューキノロン系には耐性を持っていない可能性が高いと思われます。

【ニューキノロン系にはどの整腸剤がいいの?】

「長崎大学医学部・歯学部付属病院における整腸剤適正使用への取り組み」では、
過去の報告より酪酸菌(配合している商品としては、ミヤBMやビオスリー)の投与が望ましいと考えています。
酪酸菌は、芽胞を形成することで、抗菌薬投与時にも失活しないと考えられているそうです。

参考

長崎大学医学部・歯学部付属病院における整腸剤適正使用への取り組み
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/8345/1/YAKUZA126_1155.pdf

福岡県薬剤師会HP:薬事情報センターに寄せられた質疑・応答(2009年5月)
https://www.fpa.or.jp/library/old/infomation/qa/Y9K05.html