異動先の薬局で、関節リウマチ(RA)の処方箋がよくくるので、患者さんへの指導の内容を充実させるために抗リウマチ薬をまとめました。
今回は、メトトレキサート以外の従来型合成抗リウマチ薬です。
なお、参考にさせていただいたガイドラインは
・関節リウマチ治療におけるメトトレキサート診療ガイドライン2016年改訂版(以下、MTXガイドライン)
・関節リウマチ診療ガイドライン2014(以下、RAガイドライン)
です。
なお、MTXガイドラインには以下の記載がある。
MTX を十分量(通常 10 〜 12 mg/ 週以上)継続的に使用して,3 〜 6 カ月経過しても治療目標に 達しない場合は,従来型合成抗リウマチ薬の併用は選択肢の 1 つである.その場合,MTX との併用により有効性が確認されているブシラミン(BUC),サラゾスルファピリジン(SASP),イグラチモド(IGU),タクロリムス(TAC)を推奨する.
実際にこの4つは、私の働いている薬局でもよく処方されていますので、この4つをメインにまとめたいと思います。
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ブシラミンはペニシラミン類似の化合物である。有効性は高く、ペニシラミンよりも安全性は良好である。副作用/効果の観点からも200 mg/日以下の用量が推奨される。MTX との併用の有効性が報告されている。(参考:今日の治療薬2018年版)
禁忌
1.血液障害のある患者及び骨髄機能が低下している患者
[骨髄機能低下による重篤な血液障害の報告がある]
2.腎障害のある患者
[ネフローゼ症候群等の重篤な腎障害を起こすおそれがある]
3.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
原則禁忌
(次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること)
1.手術直後の患者[重篤な副作用を起こすおそれがある]
2.全身状態の悪化している患者[重篤な副作用を起こすおそれがある]
効能・効果
関節リウマチ
用法・用量
本剤は消炎鎮痛剤などで十分な効果が得られない場合に使用すること。通常成人、1回ブシラミンとして100mgを1日3回(300mg)食後に経口投与する。なお、患者の年齢、症状、忍容性、本剤に対する反応等に応じ、また、効果の得られた後には1日量100〜300mgの範囲で投与する。1日最大用量は300mgとする。
副作用
承認時迄の調査及び使用成績調査(6,970例中)での主な副作用は
・皮疹・そう痒感852件(12.2%)
・蛋白尿288件(4.1%)
・口内炎・口内異常感118件(1.7%)
・肝機能異常113件(1.6%)
・腎機能異常71件(1.0%)
等であった。(再審査終了時)
患者さん向け資材から指導ポイントをまとめる
●効果を得られるまでにある程度の期間(1~3ヶ月)を要する。自分の判断で服薬を中止したり、服薬量を変更したりしないでください。
<服薬の注意が必要な方>
●妊娠中、授乳中または妊娠を希望する方
→禁忌ではない。妊娠には「療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与」、授乳に関しては「やむを得ず投与する場合は授乳を中止」です
●血液、腎臓、肝臓に障害がある方(または過去にあった方)
→禁忌事項や慎重投与事項です。
<次の症状に気付き、異常を感じたら、使用をやめ主治医に相談>
●風邪のような症状(発熱、のどが痛い、咳、息苦しい)
→重大な副作用で間質性肺炎(0.03%)がある。これらの症状がみられた場合には、投与を中止し、速やかに胸部X線等の検査を実施し、適切な処置を行うこと
●尿の異常(尿の色が変わる、たん白尿)
→重大な副作用でネフローゼ症候群(0.1%)などもあり、投与中は毎月1回尿検査等を実施することとなっている。
●皮膚の異常(発しん、かゆみ、紅斑、水ぶくれ、青あざ、皮下出血など)
→重大な副作用で紅皮症型薬疹(0.01%)や血小板減少症(0.04%)などがある。与中は毎月1回血液検査を実施し、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこととなっている。
サラゾスルファピリジン(商:アザルフィジンEN)
サラゾスルファピリジンはRAガイドラインでも強く推奨され、早期に反応する例も多い。欧米では2 g/日、わが国では1 g/日が承認用量である。副作用の重症化を防ぐために初期容量は0.5g/日とし、2~4週間後に増量する。皮膚症状や血液障害は使用開始から3ヶ月間に多く、ときに重症化するので注意する。(参考:今日の治療薬2018年版)
禁忌
1.サルファ剤又はサリチル酸製剤に対し過敏症の既往歴のある患者
2.新生児、低出生体重児
効能・効果
関節リウマチ
ちなみに、腸溶錠ではないサラゾスルファピリジン(商:サラゾピリン)もあり、そちらの効能・効果は「潰瘍性大腸炎、限局性腸炎、非特異性大腸炎」です。
用法・用量
本剤は、消炎鎮痛剤などで十分な効果が得られない場合に使用すること。通常、サラゾスルファピリジンとして成人1日投与量1gを朝食及び夕食後の2回に分割経口投与する。
副作用
調査症例数3,586例中、その主なものは、
・発疹280件(7.81%)
・悪心・嘔吐87件(2.43%)
・肝障害80件(2.23%)
・腹痛73件(2.04%)
・発熱71件(1.98%)
・胃不快感55件(1.53%)
・そう痒感53件(1.48%)
等であった。
患者さん向け資材から指導ポイントをまとめる
●効果を得られるまでにある1~2ヶ月を要する。自分の判断で服薬を中止したり、服薬量を変更したりしないでください。
<服薬の注意が必要な方>
●妊娠中、授乳中または妊娠を希望する方
→禁忌ではない。おきまりの「投与しないことが望ましい、やむを得ず投与する場合は授乳を中止」です。
●血液、腎臓、肝臓に障害がある方(または過去にあった方)
→慎重投与に該当。
●気管支喘息の方
→慎重投与に該当。急性発作が起こるおそれがある。
<次の症状に気付き、異常を感じたら、使用をやめ主治医に相談>
●風邪のような症状(発熱、のどが痛い、咳、息苦しい)
→間質性肺炎(0.03%)や無顆粒球症(頻度不明)などに関わる症状と思われます。
●尿の異常(尿の色が変わる、たん白尿)
→ネフローゼ症候群(頻度不明)などの腎障害に関わる症状と思われます。
●その他の異常(むかむかする、食欲がない、下痢、体がだるい、皮膚や白目は黄色くなる、むくみ、尿の量が減る、尿の色が変わる、目の充血、口内炎、首がこわばるなど)
→「食欲がない、体がだるい、皮膚や白目は黄色くなる」などは肝機能障害(2.0%)、「目の充血」は中毒性表皮壊死融解症(頻度不明)や皮膚粘膜症候群(0.03%)、「むくみ、尿の量が減る、尿の色が変わる」は腎障害の症状と思われます。
血液障害の注意書きは少ないのかな?血小板減少は0.3%と頻度も低くないので「青あざ、歯ぐきからの出血」とかあってもよさそうですけど。
ただし、投与中は定期的に(投与開始後最初の3ヵ月間は2週間に1回、次の3ヵ月間は4週間に1回、その後は3ヵ月ごとに1回)、血液学的検査及び肝機能検査を行うこととなっているので、検査の有無を確認することが重要と思われます。
イグラチモド(商:ケアラム、コルベット)
イグラチモドは25mg/日から始め4週間以上経口投与した後に50mgとすることで肝障害を減らすことができる。そのほか、血球減少、消化性潰瘍、間質性肺炎などに注意する。ワルファリンは併用禁忌、NSAIDsは併用注意である。(参考:今日の治療薬2018年版)
禁忌
1.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人
〔動物実験(ラット)で、催奇形性、早期胎児死亡率の増加及び胎児の動脈管収縮が認められている。
2.重篤な肝障害のある患者
〔副作用として肝機能障害があらわれることがあるので、肝障害を更に悪化させるおそれがある。〕
3.消化性潰瘍のある患者
〔副作用として消化性潰瘍があらわれることがあるので、消化性潰瘍を更に悪化させるおそれがある。〕
4.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
5.ワルファリンを投与中の患者
効能・効果
関節リウマチ
用法・用量
通常、成人にはイグラチモドとして、1回25mgを1日1回朝食後に4週間以上経口投与し、それ以降、1回25mgを1日2回(朝食後、夕食後)に増量する。
※1日50mgから開始した場合、1日25mgの場合と比較して、AST(GOT)、ALT(GPT)増加の発現率が高かったため、投与開始から4週間は1日25mgを投与すること。
副作用
承認時までに実施された本剤単独投与の臨床試験では、副作用(臨床検査値の変動を含む)は798例中462例(57.89%)に認められた。主なものは
・ALT(GPT)増加148例(18.55%)
・AST(GOT)増加132例(16.54%)
・γ‐GTP増加86例(15.72%、547例中)
・Al‐P増加119例(14.91%)
・NAG増加72例(9.02%)
・尿中β2ミクログロブリン増加59例(7.39%)
・総胆汁酸増加22例(5.71%、385例中)
・腹痛44例(5.51%)
・発疹41例(5.14%)等であった。
承認時までに実施された本剤とメトトレキサート(6〜8mg/週)併用投与の臨床試験では、副作用(臨床検査値の変動を含む)は232例中136例(58.62%)に認められた(投与52週後)。主なものは
・AST(GOT)増加27例(11.64%)
・ALT(GPT)増加27例(11.64%)
・リンパ球減少21例(9.05%)
・鼻咽頭炎19例(8.19%)
・血中鉄減少19例(8.19%)
・γ‐GTP増加16例(6.90%)・
・尿中β2ミクログロブリン増加13例(5.60%)
等であった。
重要な基本的な注意に、「定期的(投与開始後最初の2ヵ月は2週に1回、以降は1ヵ月に1回など)な肝機能・血液・腎機能を検査を行うこと」となっているだけあった。関連の値の変動が多いですね。
患者向医薬品ガイドから指導ポイントをまとめる
●この薬の使用中に、汎血球減少症*1(0.1%)がおこることがあります。以下の症状があらわれた場合は、この薬を中止し、ただちに医師に連絡してください。 めまい、鼻血、耳鳴り、歯ぐきの出血、息切れ、動悸、あおあざができる、出血しやすい
*1 汎血球減少症:血液中の赤血球、白血球、血小板のすべてが減少する病気
●この薬の使用中に、血液障害、肝機能障害、腎機能障害がおこることがありま す。これらの早期発見のために、飲み始めの2ヵ月は2週に1回、その後は1 ヵ月に1回など定期的に臨床検査(血液や尿などの検査)が行われます。
●この薬の使用中に、間質性肺炎(0.29%)がおこることがあるので、必要に応じて胸部 X 線検査等が行われることがあります。以下の症状があらわれた場合は、この薬 を中止し、ただちに医師に相談してください。 発熱、から咳、息苦しい、息切れ
●妊娠する可能性がある女性がこの薬を飲む場合は、妊娠しないように注意して ください。この薬を飲んでいる間に妊娠がわかった場合は、すぐに医師に相談 してください。
●授乳を避けてください。
上のような重大な副作用の他に、消化性潰瘍も0.68%と頻度が高い。
タクロリムス(商:プログラフ)
タクロリムスの関節リウマチに対する常用量は3mg/日だが高齢者では、安全性を考慮して半量より開始する。MTXや生物学的製剤との併用も可能である。骨髄抑制は見られないが、腎障害、高血圧、糖尿病、感染症には注意が必要である。使用開始早期には消化器症状を呈することがあるが、重症化は稀である。CYP3A4を介して代謝されるためシクロスポリンやボセンタンとの併用で血中濃度が増加するため併用禁忌である。スピロノラクトンとトリアムテレンも高カリウム血症合併しやすく併用禁忌である。血中濃度モニタリングが役に立つ。
禁忌
1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2 シクロスポリン又はボセンタン投与中の患者
→シクロスポリンやボセンタンの血中濃度が上昇する可能性がある
3 カリウム保持性利尿剤投与中の患者
→本剤と相手薬の副作用が相互に増強され、高カリウム血症が発現することがある
4 生ワクチンを接種しないこと
→免疫抑制作用により発症の可能性が増加するため
効能・効果
●下記の臓器移植における拒絶反応の抑制
腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植
●骨髄移植における拒絶反応及び移植片対宿主病の抑制
●重症筋無力症
●関節リウマチ(既存治療で効果不十分な場合に限る)
●ループス腎炎(ステロイド剤の投与が効果不十分、又は副作用により困難な場合)
●難治性(ステロイド抵抗性、ステロイド依存性)の活動期潰瘍性大腸炎(中等症~重症に限る)
●多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎
用法・用量(関節リウマチ部分抜粋)
通常、成人にはタクロリムスとして3mgを1日1回夕食後に経口投与する。なお、高齢者には1.5mgを1日1回夕食後経口投与から開始し、症状により1日1回3mgまで増量できる。
用法用量にクセがあります。移植の場合には「通常1日2回」で服用タイミングに制限はないのですが、重症筋無力症、関節リウマチ、ループス腎炎は「1日1回で夕食後」となっている。活動期潰瘍性大腸炎、多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎では、1日2回 朝食後及び夕食後」となっているため、併用している薬から疾病を推測して適切な用法用量で使用されているか確認することは重要と思われます。
副作用
添付文書で5%以上の副作用を抜粋したいと思います。
・腎障害(BUN上昇、クレアチニン上昇、クレアチニンクリアランス低下、尿蛋白)(23.1%)
・高カリウム血症
・高尿酸血症
・低マグネシウム血症
・血圧上昇
・振戦
・肝機能異常(AST上昇、ALT上昇、Al-P上昇、LDH上昇、γ-GTP上昇)
患者さん向け資材から指導ポイントをまとめる
●服用し忘れた場合は、
<臓器移植および骨髄移植を受けられたみなさま/潰瘍性大腸炎および多発性 筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎患者のみなさま>
気がついたときにできるだけ早く1回分を服用して下さい。ただし、次に服用する時間は、5時間以上間隔をあけて下さい。
<重症筋無力症/関節リウマチ/ループス腎炎患者のみなさま>
次の服用時間に1回分を服用するようにして下さい。
※絶対に、2回分をまとめて1度に服用しないでください。
疾病によって、服用し忘れた場合の対応が違うのはビックリです。
●グレープフルーツ(ジュース)や一部のかんきつ類(ブンタン、ハッサクなど)と 一緒に服用すると、このお薬の作用が強くなることがありますので避けて下さい。
●セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む健康食品と一緒に服用すると、このお薬の作用が弱くなることがありますので避けて下さい。
●妊娠または授乳中の場合は、必ず主治医にお伝え下さい。
→妊婦には、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与」。授乳は避けることとなっている。
●予防接種を受ける予定のある方は、接種できないワクチンがあるので必ず 主治医にご相談下さい。
→生ワクチンを接種すると、発症するおそれがあるとの報告があるため、本剤投与中の患者では生ワクチンの接種を禁忌。
不活化ワクチンは、不活化ワクチンの効果が減弱する可能性があることから併用注意となっている。
ただし、MTXガイドライン2016 p10には「肺炎球菌ワクチン(65歳以上)、インフルエンザワクチンは積極的に実施する」よう記載があるので、関節リウマチでMTX併用の患者さんに対してそれらのワクチンについて医師に意見を伺うよう促すことも重要と思われる。
MTX+レフルノミド(商:アラバ)は、間質性肺炎、骨髄障害、肝障害などの副作用が重複することから、LEF関連の間質性肺炎の発現が高い日本では、既存の肺病変がない非高齢者など慎重に適応症例を選択するひつようがある。
参考
関節リウマチ治療におけるメトトレキサート診療ガイドライン2016年改訂版
https://www.ryumachi-jp.com/publication/pdf/MTX2016kanni.pdf
関節リウマチ診療ガイドライン2014
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0064/G0000706/0011
リマチル錠服薬指導箋
https://www.ayumi-pharma.com/upd/med/guidance_pdf/8/20108RMTshido.pdf
アザルフィジンEN錠を服用される患者さんへ
https://www.ayumi-pharma.com/upd/med/guidance_pdf/9/10062AZLshido.pdf
ケアラム錠25mg 患者向医薬品ガイド 2017年1月更新版
https://medical.eisai.jp/content/000000636.pdf?20180803152129
プログラフカプセル・顆粒を服用される患者のみなさんへ
https://amn.astellas.jp/jp/di/list/material/prg_g_patient.pdf