薬局実務中疑問

鎮咳薬 メジコンとアスベリンの違い

以前に、チぺピジンヒベンズ酸塩(商:アスベリン)のみが処方された患者さんに、「咳ですか?」と聞いたら、「痰もあって、痰にも効く咳止め出しとく」と医師に言われたと話してくれました。

恥ずかしながら、その時は全然知らなくて、添付文書を見ると、しっかりと痰への効果がありました。そこで今回は、アスベリン同様に中枢性非麻薬性であるデキストロメトルファン(商:メジコン)と比較したいと思います。

【効能又は効果、用法・用量について】

チぺピジンヒベンズ酸塩(商:アスベリン)
下記疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難
感冒、上気道炎(咽喉頭炎、鼻カタル)、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺炎、肺結核、気管支拡張症

デキストロメトルファン(商:メジコン)
1. 下記疾患に伴う咳嗽
感冒,急性気管支炎,慢性気管支炎,気管支拡張症,肺炎,肺結核,上気道炎(咽喉頭炎,鼻カタル)
2. 気管支造影術及び気管支鏡検査時の咳嗽

おお、チぺピジンヒベンズ酸塩には、確かに痰への記載がありました。なお、デキストロメトルファンは気管支造影術などでの咳にも用いられるようです。

また、チぺピジンヒベンズ酸塩は散剤などで小児の用法がありますが、デキストロメトルファンは小児の用法がありません

【眠気について】

中枢性の鎮咳薬には、副作用で眠気が出るイメージがありますが、この2つの薬は使用上の注意に大きな違いがあります。
デキストロメトルファンには重要な基本的な注意として、「眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。」と記載があります。

チぺピジンヒベンズ酸塩には、その注意書きはありません

【妊娠中の使用について】

添付文書上では、どちらも禁忌ではありません。また、妊婦への投与の欄では、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。」
ただし、オーストラリアの妊娠と薬のリスクカテゴリーであるADEC基準では、デキストロメトルファンはカテゴリーAに分類されているが、チぺピジンヒベンズ酸塩は特に記載がありません
なお、ADEC基準のカテゴリーAは「多数の妊婦および妊娠可能年齢の女性に使用されてきた薬だが、それによって奇形の頻度や胎児に対する直接・間接の有害作用の頻度が増大するといういかなる証拠も観察されていない。」と定義されています。

なおジヒドロコデインリン酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合剤であるフスコデに関して、ジヒドロコデインリン酸塩やdl-クロルフェニラミンマレイン酸塩はADEC基準のカテゴリーAであるだが、dl-メチルエフェドリン塩酸塩は特にADEC基準に記載はありません(ただし、エフェドリン塩酸塩はカテゴリーA)。

この情報をもって、妊娠中の患者さんにフスコデが処方された時の対応は、それぞれの薬剤師さんによって異なると思いますが、自分なら医師に相談し、デキストロメトルファンなどを提案できたらと考えています。

【臨床成績について】

アスベリンの添付文書に記載のある臨床成績には、「53施設、1,777例について臨床試験が実施され、感冒、上気道炎、急・慢性気管支炎、肺炎、肺結核及び気管支拡張症に伴う咳・痰の症状に対し改善効果が認められている

メジコンの添付文書に記載のある臨床成績には、「有効性評価対象例(感冒、気管支炎、咽頭炎など)は1289例であり,有効率は81.3%(1048例)であった」

異なる臨床試験を比較はできませんが、有効率の数字がないので参考にもなりませんでした。

ちなみに現場で期待されている強さのイメージ
フスコデ>メジコン>アスベリン
といった感じです。(あくまで筆者の経験によるイメージです。)

参考:
今日の治療薬(2018年版)

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