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鎮咳薬 メジコンとアスベリンの違い

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以前に、チぺピジンヒベンズ酸塩(商:アスベリン)のみが処方された患者さんに、「咳ですか?」と聞いたら、「痰もあって、痰にも効く咳止め出しとく」と医師に言われたと話してくれました。

恥ずかしながら、その時は全然知らなくて、添付文書を見ると、しっかりと痰への効果がありました。そこで今回は、アスベリン同様に中枢性非麻薬性であるデキストロメトルファン(商:メジコン)と比較したいと思います。

【効能又は効果について】

チぺピジンヒベンズ酸塩(商:アスベリン)
下記疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難
感冒、上気道炎(咽喉頭炎、鼻カタル)、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺炎、肺結核、気管支拡張症

デキストロメトルファン(商:メジコン)
1. 下記疾患に伴う咳嗽
感冒,急性気管支炎,慢性気管支炎,気管支拡張症,肺炎,肺結核,上気道炎(咽喉頭炎,鼻カタル)
2. 気管支造影術及び気管支鏡検査時の咳嗽

おお、チぺピジンヒベンズ酸塩には、確かに痰への記載がありました。なお、デキストロメトルファンは気管支造影術などでの咳にも用いられるようです。

【小児用量について】

チぺピジンヒベンズ酸塩は錠剤の他に、散剤、ドライシロップ、シロップなどの剤形があり錠剤以外の剤形で「1歳未満」から用量が設定されています。

デキストロメトルファンは小児の用法がありません
デキストロメトルファンは、散剤、シロップ剤があり、シロップ剤において3歳未満から用量が設定されています。

メジコン散では、小児用量が明確に記載されていませんが、参考のためにここではシロップ剤の用量から同じ有効成分となる散剤の量を算出したいと思います。

メジコン配合シロップの
用量(1日)
有効成分量 該当するメジコン散10%の量
3ヵ月~7歳 3~8mL 7.5~20mg 0.075~0.2g
8歳~14歳 9~16mL 22.5~40mg 0.225~0.4g

【眠気について】

中枢性の鎮咳薬には、副作用で眠気が出るイメージがありますが、この2つの薬は使用上の注意に大きな違いがあります。
デキストロメトルファンには重要な基本的な注意として、「眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。」と記載があります。

チぺピジンヒベンズ酸塩には、その注意書きはありません

【妊娠中の使用について】

添付文書上では、どちらも禁忌ではありません。また、妊婦への投与の欄では、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。」
ただし、オーストラリアの妊娠と薬のリスクカテゴリーであるADEC基準では、デキストロメトルファンはカテゴリーAに分類されているが、チぺピジンヒベンズ酸塩は特に記載がありません
なお、ADEC基準のカテゴリーAは「多数の妊婦および妊娠可能年齢の女性に使用されてきた薬だが、それによって奇形の頻度や胎児に対する直接・間接の有害作用の頻度が増大するといういかなる証拠も観察されていない。」と定義されています。

なおジヒドロコデインリン酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合剤であるフスコデに関して、ジヒドロコデインリン酸塩やdl-クロルフェニラミンマレイン酸塩はADEC基準のカテゴリーAであるだが、dl-メチルエフェドリン塩酸塩は特にADEC基準に記載はありません(ただし、エフェドリン塩酸塩はカテゴリーA)。

この情報をもって、妊娠中の患者さんにフスコデが処方された時の対応は、それぞれの薬剤師さんによって異なると思いますが、自分なら医師に相談し、デキストロメトルファンなどを提案できたらと考えています。

【鎮咳作用の強さについて】

アスベリンの添付文書に記載のある臨床成績には、「53施設、1,777例について臨床試験が実施され、感冒、上気道炎、急・慢性気管支炎、肺炎、肺結核及び気管支拡張症に伴う咳・痰の症状に対し改善効果が認められている

メジコンの添付文書に記載のある臨床成績には、「有効性評価対象例(感冒、気管支炎、咽頭炎など)は1289例であり,有効率は81.3%(1048例)であった」

異なる臨床試験を比較はできませんが、有効率の数字がないので参考にもなりませんでした。

ちなみに現場で期待されている強さのイメージ
フスコデ>メジコン>アスベリン
といった感じです。(あくまで筆者の経験によるイメージです。)

【2023年8月4日追記】
鎮咳作用の強さに、書籍を読んでいたら、参考となる情報が見つかったため紹介します。

メジコンは10~20mg(通常1回量15~30mg)で、リン酸コデインの15mg(通常1回量20mg)と同じ効果が得られるとされています(慢性咳嗽患者を対象)。
つまりメジコンは通常量くらいでリン酸コデインと同じくらいの効果

一方アスベリンは、16mg/kgでリン酸コデインとほぼ同程度の効果を示したとされています(イヌを対象)。
これは体重60kgと想定すると成分960mgとなります。アスベリンの通常1回量は10~20mgのためかなり多い量です。

このことから、一般的な用量を考慮すると、メジコンの方がアスベリンよりも鎮咳作用が強いだろうとのことでした。

※ただし、これは少し疑問が残ります。
アスベリンにおいては、イヌを対象とした試験です。動物対象の試験は、ヒトの体重換算では、多めの薬物を投与することも珍しくないです。そのため、リン酸コデインの量が不明なので、本当にアスベリンの試験でリン酸コデインがヒトでの一般的用量程度しか投与されていないかは疑問が残ります。

オススメの書籍

今回の記事を読んで面白いと思った方は、薬を比較して勉強するのが向いているのだと思います。(比較すると、同時に複数の薬が勉強できるのもメリット

また、今回は私も自分では気が付けなかったことに対して、書籍から情報を得ることができました。自分だけではできない発見をさせれくれるのも本の良いところだと感じました。

ここでは、薬を比較して紹介してくれる書籍2冊を紹介しますので、興味がある方はぜひ読んでみてください。

参考資料

今日の治療薬(2018年版)

アスベリン錠10/20/アスベリン散10%などの添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2249003B1037_2_03

メジコン錠15mg/メジコン散10% 添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2223001B1210_2_03/

メジコン配合シロップ 添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2249106Q1066_2_04/

アスベリン錠など インタビューフォーム
https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1&yjcode=2249003B1037

メジコン錠など インタビューフォーム
https://med.shionogi.co.jp/products/medicine/medicon/interview-form_pdf.html