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SGLT2阻害薬 特徴まとめ

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糖尿病治療薬を詳しく勉強したい薬剤師・薬学部生向けに
糖尿病標準診療マニュアル2022(以下マニュアル)
糖尿病診療ガイドライン(以下ガイドライン)
を参考に糖尿病治療薬の情報をまとめています。

今回はSGLT2阻害薬になります。

SGLT2阻害薬の特徴

成分として
・イプラグリフロジン(商:スーグラ):適応に1型糖尿病もある
・ダパグリフロジン(商:フォシーガ):適応に1型糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病もある
・ルセオグリフロジン(商:ルセフィ)
・トホグリフロジン(商:デベルザ)
・カナグリフロジン(商:カナグル):適応に2型糖尿病を合併する慢性腎臓病もある
・エンパグリフロジン(商:ジャディアンス):適応に慢性心不全もある
などがある。

近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制して、尿糖排泄を促進し、血糖低下作用を発揮する。インスリンと独立した血糖改善作用を介して血糖コントロールの改善が得られ、体重の減少も認められる

●薬剤間で一定の基準が定められていないが、eGFR30mL/分/1.73m2未満の重度腎機能障害の症例では、血糖降下作用は期待できない。

●本剤投与により脂肪分解が促進し、ケトン体の産生増加が起こりやすい。この点に関して、アメリカ食品医薬品局(FoodandDrugAdministration:FDA)は、SGLT2阻害薬の使用により入院を必要とするケトアシドーシスが増加する可能性が生じることを注意喚起している。一方、メタ解析では対照薬に比較してSGLT2阻害薬は、糖尿病性ケトアシドーシスの発症のリスクを増加させないとされている

1型糖尿病患者に関しても、イプラグリフロジンとダパグリフロジンの使用が日本で可能となった。しかしながら、プラセボに比較して、ダパグリフロジンはケトアシドーシスの発症が多いことが報告されており、1型糖尿病患者に使用する際には十分な注意が必要である。

浸透圧利尿により急性腎障害、体液量減少関連イベントが起きやすいので注意が必要である。この点に関して、65歳以上の高齢者を対象としたわが国の市販後調査で、75歳以上あるいは利尿薬を併用している症例での発症頻度が増加しており、このような症例への投与は慎重にするべきである

●また、性器感染症の頻度の増加が認められているため、尿路感染症の既往のある患者への使用は慎重に行う必要がある

●メタ解析では、対照群と比較してSU薬やインスリン治療との併用で低血糖の頻度は増加していない。

心血管イベントの発症に関しては、心血管イベント発症リスクの高い患者においてプラセボと比較してエンパグリフロジンや日本の承認用量を超えたカナグリフロジンは、その発症を有意に抑制することが大規模試験で示された。また、ダパグリフロジンが、プラセボと比較して心血管死や心不全による入院を有意に抑制することも示唆された。

●癌の発症に関しては、最近のメタアナリスでは、SGLT2阻害薬は癌全体の発症を増加はさせないことが示されている。しかし、安全性に関しては、引き続き今後発表される予定の大規模試験での検証が必要である

●実臨床においては、「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」のRecommendationを十分に踏まえたうえで、安全性を最優先して本薬剤の適応を判断すべきである。

SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendationより

Recommendation

1:1型糖尿病患者の使用には一定のリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、使用する場合は、十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ使用を検討すべきである。
2:インスリンやSU薬等インスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。
3:75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する。
4:脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬の併用の場合には特に脱水に注意する。
5:発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。また、手術が予定されている場合には、術前3日前から休薬し、食事が十分摂取できるようになってから再開する。
6:全身倦怠・悪心嘔吐・腹痛などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシス(euglycemicketoacidosis;正常血糖ケトアシドーシス)の可能性があるので、血中ケトン体(即時にできない場合は尿ケトン体)を確認するとともに専門医にコンサルテーションすること。特に1型糖尿病患者では、インスリンポンプ使用者やインスリンの中止や過度の減量によりケトアシドーシスが増加していることに留意すべきである。
7:本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、外陰部と会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)を疑わせる症状にも注意を払うこと。さらに、必ず副作用報告を行うこと。
8:尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすること。

副作用の事例と対策 重症低血糖

引き続き重症低血糖の発生が報告されている。重症低血糖のうちインスリン併用例が多く、SU薬などのインスリン分泌促進薬との併用が次いでいる。DPP-4阻害薬の重症低血糖の場合にSU薬との併用が多かったことに比し本剤ではインスリンとの併用例が多いという特徴がある。SGLT2阻害薬による糖毒性改善などによりインスリンの効きが急に良くなり低血糖が起こっている可能性がある。このように、インスリン、SU薬又は速効型インスリン分泌促進薬を投与中の患者へのSGLT2阻害薬の追加は重症低血糖を起こすおそれがあり、予めインスリン、SU薬又は速効型インスリン分泌促進薬の減量を検討することが必要である。また、これらの低血糖は、必ずしも高齢者に限らず比較的若年者にも生じていることに注意すべきである。2型糖尿病患者では、インスリン製剤との併用する場合には、低血糖に万全の注意を払ってインスリンを予め相当量減量して行うべきである。1型糖尿病患者では、インスリンの過度の減量によりケトアシドーシスリスクが高まる可能性に留意し、慎重に減量する(方法については下記参照)。
血糖コントロール良好(HbA1c<7.5%)な場合、開始時に基礎および追加インスリンを10~20%前後を目安に減量することを検討する。
●血糖コントロール良好でない(HbA1c≧7.5%)場合、服薬開始時の基礎および追加インスリンは減量しないかあるいはわずかな減量にとどめる。
●経過中、血糖コントロールが改善し低血糖が顕在化した場合は、血糖自己測定や持続血糖モニタリングの結果に応じ、患者自身で責任インスリン量をすみやかに減量できるよう指導する。
ただし、上記の場合でも患者にはインスリンを極端に減量することは控えるよう指導する。特に基礎インスリンの減量は治療前の20%を越えることは避け、慎重に減量すべきである。

また、SU薬にSGLT2阻害薬を併用する場合には、DPP-4阻害薬の場合に準じて、以下の通りSU薬の減量を検討することが必要である。
・グリメピリド2mg/日を超えて使用している患者は2mg/日以下に減じる
・グリベンクラミド1.25mg/日を超えて使用している患者は1.25mg/日以下に減じる
・グリクラジド40mg/日を超えて使用している患者は40mg/日以下に減じる

各製剤の効能又は効果 用法及び用量

イプラグリフロジン(商:スーグラ)添付文書抜粋

効能又は効果

2型糖尿病
1型糖尿病

効能又は効果に関連する注意

●重度の腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全患者では本剤の効果が期待できないため、投与しないこと。
●中等度の腎機能障害のある患者では本剤の効果が十分に得られない可能性があるので投与の必要性を慎重に判断すること。

用法及び用量

〈2型糖尿病〉
通常、成人にはイプラグリフロジンとして50mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら100mg1日1回まで増量することができる。

〈1型糖尿病〉
インスリン製剤との併用において、通常、成人にはイプラグリフロジンとして50mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら100mg1日1回まで増量することができる。

用法及び用量に関連する注意

〈1型糖尿病〉
●本剤はインスリン製剤の代替薬ではない。インスリン製剤の投与を中止すると急激な高血糖やケトアシドーシスが起こるおそれがあるので、本剤の投与にあたってはインスリン製剤を中止しないこと。
●本剤とインスリン製剤の併用にあたっては、低血糖リスクを軽減するためにインスリン製剤の減量を検討すること。ただし、過度な減量はケトアシドーシスのリスクを高めるので注意すること。なお、臨床試験では、インスリン製剤の1日投与量は15%減量することが推奨された

ダパグリフロジン(商:フォシーガ)添付文書抜粋

効能又は効果

2型糖尿病
1型糖尿病
慢性心不全※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
慢性腎臓病※ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。

効能又は効果に関連する注意

〈1型糖尿病、2型糖尿病〉
重度の腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全患者では本剤の血糖降下作用が期待できないため、投与しないこと。
〈慢性心不全〉
●左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること
●「臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、左室駆出率等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。
〈慢性腎臓病〉
eGFRが25mL/min/1.73m2未満の患者では、本剤の腎保護作用が十分に得られない可能性があること、本剤投与中にeGFRが低下することがあり、腎機能障害が悪化するおそれがあることから、投与の必要性を慎重に判断すること。eGFRが25mL/min/1。73m2未満の患者を対象とした臨床試験は実施していない。
●「臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(原疾患、併用薬、腎機能等)を十分に理解した上で、慢性腎臓病に対するガイドラインにおける診断基準や重症度分類等を参考に、適応患者を選択すること。

用法及び用量

〈2型糖尿病〉
通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg1日1回に増量することができる。
〈1型糖尿病〉
インスリン製剤との併用において、通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg1日1回に増量することができる。
〈慢性心不全、慢性腎臓病〉
通常、成人にはダパグリフロジンとして10mgを1日1回経口投与する。

用法及び用量に関連する注意

〈1型糖尿病〉
●本剤はインスリン製剤の代替薬ではない。インスリン製剤の投与を中止すると急激な高血糖やケトアシドーシスが起こるおそれがあるので、本剤の投与にあたってはインスリン製剤を中止しないこと。
●本剤とインスリン製剤の併用にあたっては、低血糖リスクを軽減するためにインスリン製剤の減量を検討すること。ただし、過度な減量はケトアシドーシスのリスクを高めるので注意すること。なお、臨床試験では、インスリン製剤の1日投与量の減量は20%以内とすることが推奨された。
〈慢性心不全、慢性腎臓病〉
1型糖尿病を合併する患者では、糖尿病治療に精通した医師あるいはその指導のもとで、適切な対応が行える管理下で5mg1日1回から投与を開始すること。また、経過を十分に観察しながらインスリン量を調整した後、10mg1日1回に増量すること。5mg1日1回では慢性心不全及び慢性腎臓病に対する有効性は確認されていない

特定の背景を有する患者に関する注意

中等度の腎機能障害患者
〈1型糖尿病、2型糖尿病〉
投与の必要性を慎重に判断すること。本剤の糖排泄効果は腎機能に依存するため、継続的にeGFRが45mL/min/1.73m2未満に低下した患者では、本剤の効果が十分に得られない可能性がある

カナグリフロジン(商:カナグル)添付文書抜粋

効能又は効果

2型糖尿病
2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。

効能又は効果に関連する注意

〈2型糖尿病〉
本剤は2型糖尿病と診断された患者に対してのみ使用し、1型糖尿病の患者には投与をしないこと。
●高度腎機能障害患者又は透析中の末期腎不全患者では本剤の血糖低下作用が期待できないため、投与しないこと。
●中等度腎機能障害患者では本剤の血糖低下作用が十分に得られない可能性があるので投与の必要性を慎重に判断すること。

〈2型糖尿病を合併する慢性腎臓病〉
eGFRが30mL/min/1.73m2未満の患者では、本剤の腎保護作用が十分に得られない可能性があること、本剤投与中にeGFRが低下することがあり、腎機能障害が悪化するおそれがあることから、新規に投与しないこと。また、本剤投与中にeGFRが30mL/min/1.73m2未満に低下した場合は、投与継続の必要性を慎重に判断すること。
●「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(原疾患、併用薬、腎機能等)を十分に理解した上で、慢性腎臓病に対するガイドラインにおける診断基準や重症度分類等を参考に、適応患者を選択すること。

用法及び用量

通常、成人にはカナグリフロジンとして100mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。

エンパグリフロジン(商:ジャディアンス)添付文書抜粋

効能又は効果

〈ジャディアンス錠10mg・25mg〉
2型糖尿病
〈ジャディアンス錠10mg〉
慢性心不全 ※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。

効能又は効果に関連する注意

〈2型糖尿病〉
●本剤は2型糖尿病と診断された患者に対してのみ使用し、1型糖尿病の患者には投与をしないこと。
●高度腎機能障害患者又は透析中の末期腎不全患者では本剤の効果が期待できないため、投与しないこと。
●中等度腎機能障害患者では本剤の効果が十分に得られない可能性があるので投与の必要性を慎重に判断すること。
〈慢性心不全〉
●臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。

用法及び用量

〈2型糖尿病〉
通常、成人にはエンパグリフロジンとして10mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら25mg1日1回に増量することができる。

〈慢性心不全〉
通常、成人にはエンパグリフロジンとして10mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。

用法及び用量に関連する注意

2型糖尿病と慢性心不全を合併する患者では、血糖コントロールが不十分な場合には血糖コントロールの改善を目的として本剤25mgに増量することができる。ただし、慢性心不全に対して本剤10mg1日1回を超える用量の有効性は確認されていないため、本剤10mgを上回る有効性を期待して本剤25mgを投与しないこと。

参考

糖尿病診療ガイドライン2019(http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-05.pdf

糖尿病標準診療マニュアル2022 一般診療所・クリニック向け
https://human-data.or.jp/wp/wp-content/uploads/2022/03/DMmanual_18.pdf

糖尿病治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation
http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/recommendation_SGLT2.pdf

スーグラ錠 添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3969018F1022_1_14//

フォシーガ錠 添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3969019F1027_2_13/

カナグル錠 添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3969022F1029_1_17/

ジャディアンス錠 添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3969023F1023_1_14/