今回は中枢神経系疾患のひとつであるてんかんについて、ゴロ・覚え方を交えてまとめていきます。
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てんかんの病態
概要
てんかんは種々の病因によって生じる慢性の脳疾患であり、大脳ニューロンの過剰な放電から由来する反復性の発作(てんかん発作)を主徴とし、抑制性神経伝達物質(GABAなど)の減少、興奮性神経伝達物質(グルタミン酸など)の増加によって発病すると考えられている。脳波検査では、棘波や棘徐波などの異常脳波が生じる。
※なので薬は、その逆で、GABAの働きを増加させたり、グルタミンの遊離を抑制したりするよ。
分類
てんかんは、局在関連てんかん、全般てんかん、未決定てんかんに分類され、さらに前者2つは、その原因から特発性、症候性、潜因性に分類される。
●原因によるてんかんの分類
分類 | 特徴 |
特発性(素因性)てんかん | ・原因不明で遺伝的素因の強いもの ・てんかんの約80%を占め、小児に多い |
症候性(構造的/代謝性) てんかん |
・頭部外傷、脳血管障害、脳腫瘍などの脳の器質的な損傷(脳疾患)が原因で起こるもので、70歳以上で発生頻度が高い ・てんかん全体の約20%を占める ・一般にてんかんの薬物治療に対する反応性は不良である |
潜因性てんかん | 原因となる病因が推定されているが、確定していないもの |
症状
てんかんは発作型の分類により部分発作、全般発作に分類される。部分発作は発作の焦点が脳の一部に限局しているものであり、全般発作はてんかん焦点が脳幹を含め多病果的で、両側大脳半球から対称的に投射されるものである。
●部分発作(焦点発作)分類
分類 | 特徴 |
単純部分発作 (≒皮質焦点発作) |
・部分発作のうち意識障害を起こさないもの ・てんかんの焦点となる脳領域に対応した運動や感覚機能症状として現れる ・前頭葉運動野にてんかん焦点が存在する場合、てんかん放電活動が近接する運動皮質に連続して伝播していくことで痙攣が全身に広がっていく発作が生じる(ジャクソン運動発作という) |
複雑部分発作 (≒精神運動発作) |
・部分発作のうち意識障害を伴うもの(発作後に発作中のことを見えていない) 側頭葉、側頭葉などに焦点がある ・自動症(口をぺちゃくちゃと鳴らす、口をもぐもぐ動かす、服をなでるなど無目的行動を繰り返すこと)を示す間欠期に側頭葉に棘波と鋸歯状波が見られる |
二次性全化に移行する発作もある。
【覚え方】
単純だから、意識障害なし
複雑だから、意識障害あり
●全般(全身)発作
分類 | 特徴 |
強直間代発作 (≒大発作) |
・突然の意識消失とともに全身の強直性・間代性痙攣→痙攣後昏睡状態に入る ・発作中は呼吸筋が痙攣するため、呼吸困難によりチアノーゼも見られる ・脳波は棘波や棘徐波複合が見られる ・強直性代性痙攣、意識消失を繰り返す重篤な場合をてんかん重積発作といい、高熱、心機能低下など生命の危険を伴う場合がある ・てんかん重積発作の第一選択薬は、ジアゼパムやロラゼパム、ミダゾラム(小児)である |
欠神発作 (≒小発作) |
・瞬間的な欠神(2~10秒の意識消失)が1日に何回も反復する ・痙攣は起こらない ・小児に多い ・脳波は3Hzの徐波複合(spikeandwave)が見られる |
ミオクロニー発作 | ・四肢体幹屈筋群の対称性(両側性)の突然の強い瞬間的攣縮(0.5~1秒) ・意識障害は起こらない ・1~10歳に好発 |
脱力発作 | ・1~2秒間持続する突然の姿勢保持筋群の緊張消失であり、瞬間的な意識障害を認める ・頭部外傷をきたしやすい |
【覚え方】
強直間代発作(大発作):大なので痙攣も意識消失もあり
欠神発作(小発作):意識が欠ける意識消失あり、小なので大と比べると痙攣なし
ミオクロニー発作:攣縮あり、意識障害なし
※ちなみに意識障害と意識消失は異なるので注意
意識障害:様々なレベルがあります。昏睡状態でなくとも、眠りがちになったり、会話や考えが混乱したり、集中力を欠いたり、明瞭に思考できない状態も含まれます。(参考:日本神経学会HP)
意識消失:おおくは気絶のことです
練習問題(参考:第109回 問57)
●身体の一部又は全身に瞬間的な筋収縮が起こり、発作持続時間が短く、意識消失の自覚症状が無いことが多いてんかん発作はどれか。1つ選べ。
1.複雑部分発作
2.欠神発作
3.強直間代発作
4.ミオクロニー発作
5.脱力発作
【解答と解説】正解は4
意識障害を無いことが多いのは、部分発作の単純部分発作や全般発作のミオクロニー発作である。
検査
てんかん発作では脳神経細胞の過剰な放電が起こっており、脳波検査が確定診断として用いられる。MRIやCTが用いられることもあるが、脳波検査の方が有用性が高い。
てんかんの治療
抗痙攣薬を使用する際は、以下の点に注意する。
①長期治療を必要とするため、単剤少量投与から開始し、徐々に増量していく
②薬用量は、年齢、体重、身体疾患の合併などを考慮しながら血中薬物濃度のモニタリングをして調節する
③小児では抗てんかん薬の体重あたりの代謝速度が速い場合があり、投与量は成人の2倍程度要することが多い
④妊婦に対しては有益性投与とされるが、トリメタジオン(商:ミノアレ)は妊婦に禁忌である
⑤最終の発作消失後2~5年以上経過した場合は、抗てんかん薬の減量、中止を考慮する
薬理作用については、他のページにゴロと一緒にまとめていますのでそちらを参考にしてください(下にリンク貼っておきます)
また、発作型の分類と薬剤選択は以下の通りです(参考:今日の治療薬2018)
分類 | 第一選択薬 | 第二選択薬 | |
部分発作 | カルバマゼピン | ラコサミド、レベチラセタム、ラモトリギン、フェニトイン、バルプロ酸、ゾニサミド +ペランパネル、+トピラマート |
|
全般発作 | 強直間代発作 | バルプロ酸 | クロバザム、ラモトリギン、フェノバルビタール、フェニトイン +レベチラセタム、+ペランパネル |
欠神発作 | エトスクシミド、ラモトリギン | ||
ミオクロニー発作 | クロナゼパム、+レベチラセタム | ||
脱力発作 | エトスクシミド |
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