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トラマドール+ナルデメジン

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今回、トラマドール・アセトアミノフェン配合剤(商:トラムセット)+ナルデメジン(商:スインプロイク)が処方されて症例に出会いました。
この処方は、オピオイド系の作用と副作用を端的に把握できると思い記事にしました。

<トラマドールについて>

トラマドールは、非麻薬性の弱オピオイド鎮痛薬の1つです。
鎮痛の作用機序としては、「オピオイドμ受容体の刺激」「ノルアドレナリンとセロトニンの再取り込み阻害」が言われています。

承認時の副作用は、悪心(41.4%)、嘔吐(26.2%)、傾眠(25.9%)、便秘(21.2%)、浮動性めまい(18.9%)です。
【副作用の説明】
嘔吐:第四脳室底化学受容器引金帯(CTZ)に発現しているオピオイドμ受容体刺激作用により発現。投与初期や増量時に生じることが多く、数日以内に慣れて症状が治まることが多い
→(対策)CTZでのオピオイドμ受容体刺激はドパミン遊離を促し、ドパミンD2受容体を介して嘔吐中枢を刺激する。よって対策は、抗ドパミン作用を有するハロペリドール(商:セレネース)、プロクロルペラジン(商:ノバミン)などが用いられる

便秘:消化管に存在するオピオイドμ受容体を介して消化管運動や消化管神経活動を抑制することにより発現。便秘は耐性形成がほとんど起こらないため下剤の継続的投与の対策が必要になることがある。

オピオイド鎮痛薬の副作用に関する服薬指導では、嘔吐と便秘を説明する際に耐性形成の有無を含めて話すと患者さんにより有益な情報を提供できると思われます。
例えば、嘔吐は耐性形成しやすいので、発現後すぐに中止するのではなく、可能ならばしばらく様子をみるよう指導(ただし嘔吐・嘔気が続くようであれば医師に相談するよう指導)、逆に便秘は耐性を形成しにくいので発現すれば必ず医師に報告するよう指導するなど。

※薬剤師国家試験やCBTを受ける人は、今回の例でオピオイド鎮痛薬が主に作用する受容体サブタイプ、副作用などを把握しておくと、試験勉強では内容が入ってきやすいかも・・

<ナルデメジンについて>

ナルデメジン(商:スインプロイク)は、オピオイド受容体の遮断作用を有し、オピオイド誘発性便秘症に効果を発揮する薬です。
なお、ナルデメジン(商:スインプロイク)は中枢におけるオピオイド鎮痛薬の作用は阻害しにくいようにデザインされている。

【用法・用量】
通常、成人にはナルデメジンとして1回0.2mgを1日1回経口投与する。
【用法・用量に関連する使用上の注意】
オピオイドの投与を中止する場合は、本剤の投与を中止すること。

副作用は主に下痢や腹痛である。

参考:
日本緩和医療学会,がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010版)
https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2010/chapter02/02_04_01_08.php
日経メディカル 日本発で新機序のオピオイド誘発性便秘
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201705/551235.html
各添付文書やIF

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