「高コレステロール血症」や「高トリグリセライド血症」を合わせて「高脂血症」と呼ぶ。
さらに2007年より、「低HDLコレステロール血症」も合わせて「脂質異常症」と呼ぶようになった。
※トリグリセライドは中性脂肪とも言われます。
脂質異常症は、自覚症状はほとんどない。
しかし、放置すると動脈硬化が進行し、狭心症、心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化性疾患の危険因子となる。
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概要
脂質異常症とは、血中LDLコレステロール値が140mg/dL以上、血中HDLコレステロール値が40mg/dL未満、 血中トリグリセリド値が150mg/dL以上、あるいはいずれかを呈する状態をいう。 男性では40歳代をピークに、女性では閉経後より上昇し60歳代でLDLコレステロール値が高くなる。
上記の数字は、各脂質異常症の診断基準。
(ゴロ)悪いよー。はよートリいこー!
「悪」悪玉コレステロール(LDLのこと)
「いよー」140
「は」HIGHなのでHDL(善玉コレステロール)
「よー」40
「トリ」トリグリセリド
「いこー」150
※HDLは善玉なので、数字が低いと異常です。
1 血清脂質
脂質は水に溶けないため、血中の脂質は、アポタンパク質(アポリポタンパク質)と結合し血液に可溶なリポタンパク質として血中に存在する。 リポタンパク質は、コレステ ロール、トリグリセリド、リン脂質などである。
リポタンパク質の種類により、含まれる脂質成分の量(コレステロールとトリグリセリドの割合)に違いがある。
リポタンパク質(可溶性)=血中脂質(不溶性)+アポタンパク質
脂質は、外因性脂質のキロミクロンと、 内因性脂質の超低比重リポタンパク質 (VLDL) 中間型リポタンパク質 (IDL)、 低比重リポタンパク質(LDL)及び高比重リポタンパク質 (HDL)に分けられる。
●血漿リポタンパク質の組成
TGとChoの関係 | 大きさ | 比重 | |
キロミクロン (カイロミクロン) |
TG > Cho | 大 | 軽い |
VLDL(超低比重) | TG > Cho | ↑ | ↑ |
IDL(中間比重) | TG ≒ Cho | | | | |
LDL(低比重) | TG < Cho | ↓ | ↓ |
HDL(高比重) | TG < Cho | 小 | 重い |
※なお、HDLコレステロール以外のリポタンパク質を合わせて「non HDLコレステロール」という。
上記表で記載しているように、リポタンパク質は、主にTGとChoの割合で分類されます。
健康番組などで善玉コレステロールと言われるのが、HDLコレステロール。
HDLは、末消組織から肝臓へChoの運搬し、動脈硬化の進展を抑制する。
逆に、悪玉コレステロールと言われるLDLコレステロールは、末消組織へChoの運搬するため、動脈硬化の危険因子となる。
高脂血症の分類
脂質異常症は、体質や遺伝子異常が原因の、他の基礎疾患を伴わない原発性(一次性) 脂質異常症と、他の基礎疾患により生じる続発性(二次性) 脂質異常症に分類される。
原発性脂質異常症は遺伝子異常や病態に基づき分類される。 続発性脂質異常症の主な原因疾患としては、糖尿病、甲状腺機能低下症、クッシング症候群、先端巨大症、褐色細胞腫などの内分泌系疾患、ネフローゼ症候群、慢性腎不全などの腎疾患、閉塞性黄疸、原発性胆汁性肝硬変、原発性肝臓がんなどの肝疾患がある。また、副腎皮質ステロイド性薬や経口避妊薬の服用、アルコールの多飲でも発症する。
1 原因からの分類
分類 | 特徴 |
原発性 脂質異常症 |
基礎疾患はなく、原因不明のもの 原発性のうち遺伝歴がはっきりしているものを家族性脂質異常症という 〈疾患名> ①家族性高コレステロール血症 ②家族性高トリグリセリド血症 ③家族性複合性脂質異常症 |
続発性 脂質異常症 |
基礎疾患により、二次的に起こるもの <基礎疾患 > ①ネフローゼ症候群:糸球体障害→基底膜タンパク透過性亢進 →低アルブミン血症→リポタンパク質合成促進→ LDL・VLDL 上昇 ②クッシング症候群:血中コルチゾール上昇→血糖上昇→高インスリン血症→TG合成促進→脂質異常症 ③甲状腺機能低下症:血中チロキシン低下→ Cho異化低下→血中Cho上昇 ④糖尿病 ⑤肥満 |
2脂質異常症 WHO分類
WHO分類は、血清リポタンパク分画の分布以上に基づく分類である。
増加する リポタンパク質 |
血清脂質 | 第一選択薬※ | ||
Cho | TG | |||
Ⅰ | キロミクロン | → | ↑↑↑ | |
Ⅱa | LDL | ↑↑ | → | スタチン系 |
Ⅱb | LDL、VLDL | ↑↑ | ↑ | |
Ⅲ | IDL | ↑ | ↑ | フィブラート系 |
Ⅳ | VLDL | → | ↑↑ | フィブラート系 |
Ⅴ | キロミクロン VLDL |
↑↑ | ↑↑↑ |
※参考:今日の治療薬2018年版
症状
脂質異常症自体では自覚症状はないが、長期の脂質異常症により脂質が組織に蓄積し、
種々の症状を呈する。
高コレステロール血症の症状
LDL、IDLはコレステロールを多く含むリポタンパク質であり、これらが増加するⅡ型、Ⅲ型の脂質異常では、動脈壁へのコレステロール過剰蓄積による粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)が進展しやすい。
(ただし、TGの増加も動脈硬化の危険因子ではある。)
家族性高コレステロール血症では、全身の皮膚や健などに変性LDLを貪食して泡沫化したマクロファージが集積して、黄色腫を形成するのが特徴的である。
高トリグリセリド血症の症状
急性膵炎や脂肪肝などが現れることがある。
特に、トリグリセリド(TG、中性脂肪)が1,000mg/dLを超えると発症しやすいと言われています。
※基本的には「LDL-コレステロール の管理目標値を達成し,その後 non-HDL-コレステロールの達成を目指す」とガイドラインにも記載はありますが、500mg/dLを超える重高度TG血症の場合には、急性膵炎予防のためTG低下作用に優れるフィブラートが積極的に検討されます。
各脂質異常ので症状のゴロ
(ゴロ)水泳で脂肪トリ、これが王道
「水泳」膵炎
「脂肪」脂肪肝
「トリ」高トリグリセライド血症の症状
「これ」高コレステロールの症状
「王」黄色腫
「道」動脈硬化
※別の暗記術で、高コレステロールの症状にはCho「コウ」と読める漢字が入っている。
黄色腫→「黄」黄河などでコウと読みます
動脈硬化「硬」コウと読める
脂質異常症の診断基準として、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版(以下、ガイドライン)では以下のように定められている。
●脂質異常症の診断基準(空腹時採決*)
LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
120~139mg/dL | 境界型高LDLコレステロール血症** | |
HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
トリグリセライド | 150mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
non-HDLコレステロール | 170mg/dL以上 | 高non-HDLコレステロール血症 |
150~169mg/dL | 境界型高non-HDLコレステロール血症** |
* 10 時間以上の絶食を「空腹時」とする.ただし水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可とする.
** スクリーニングで境界域高 LDL-C 血症,境界域高 non-HDL-C 血症を示した場合は,高リスク病態がないか検討し、治療の必要性を考慮する.
● LDL-C は Friedewald 式(TC-HDL-C-TG/5)または直接法で求める.
● TG が 400 mg/dL 以上や食後採血の場合は non-HDL-C(TC-HDL-C)か LDL-C 直接法を使用する。ただしスクリーニング時に高 TG 血症を伴わない場合は LDL-C との差が+30 mg/dL より小さくなる可能性を念頭においてリスクを評価する。
①食直後はトリグリセリド値が上昇しやすいため、空腹時に採血を行う
②高LDLコレステロール血症の血清は透明黄色を示す
③低HDLコレステロール血症は動脈硬化症の発症リスクとなる
④高トリグリセリド血症の血清はクリーム状を示す
脂質異常症の治療
個々の患者での危険因子を評価して、LDLコレステロール値に注目して治療目標値
を定める。
ちなみに、脂質異常症と診断されたからといって、必ずしも診断基準以下にするための治療が始まるわけではない。
治療の必要性や管理目標値は、既往歴・現病歴、危険因子をスコア化してリスク分けを行い、そのリスクにあった治療を行っていく。
リスク分けの詳細な方法は、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版に記載あり。(情報が多いのでここでは割愛。)
参考:
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/1/107_73/_pdf/-char/ja
生活習慣の改善
食事・運動療法を3~4ヶ月行い、コレステロールやトリグリセリドが高値のときは 薬物療法を行う。 ただしIa型は虚血性心疾患の危険性が特に高いため、 診断と同時に 薬物療法を行う。
(1) 食事療法
・高コレステロール血症:カロリー制限とコレステロール食制限(200mg/日未満)、 食物繊維を多くとる (胆汁酸再吸収抑制によりコレステロール吸収抑制)
・高トリグリセリド血症:カロリー制限とアルコール・糖制限
(2) 運動療法
主にトリグリセリドを低下させる (運動→リポタンパク質リパーゼ活性化→TG分解)。 運動により HDLは増加する。BMI [体重(kg)÷身長(m) 2〕が25未満を目標とする。
(3) LDL アフェレーシス (吸着除去法) 導入
体外循環により血漿LDLを直接取り除く方法。 薬物療法で血清総コレステロール値 が250mg/dL以下に低下せず、明らかな冠動脈硬化を有するFHヘテロ接合体、FHホモ接合体に対して適用となる。 ACE阻害薬服用患者では、 吸着カラムにデキストラン硫酸セルロースを用いるとショックを起こすことがあるので禁忌である。
脂質異常症治療薬の薬理
薬理作用については、主にLDLを下げる薬とTGを下げる薬に分けて、ゴロと一緒に別ページにまとめていますのでそちらを参考にしてください。
●各種薬剤の簡単な特徴
【分類】薬物名 | 特徴 |
【スタチン系】
プラバスタチン(商:メバロチン) |
HMG-CoA還元酵素を阻害するで効果を発揮する。
★:ストロングスタチンに分類され、LDL低下作用が強力 副作用の横紋筋融解症に注意 ※フルバスタチンは用法用量に夕食後の制限があるが、その他に特に制限なし。ただし、コレステロール合成は夜間亢進するため、夜で処方されることが多い。 <禁忌> |
【陰イオン交換樹脂(レジン)】
コレスチラミン(商:クエストラン) |
腸管での胆汁酸吸収阻害(結果としてコレステロールの吸収を阻害できる)
副作用:便秘 禁忌:完全胆道閉塞 |
【小腸コレステロールトランスポーター阻害薬】
エゼチミブ(商:ゼチーア) |
小腸にてコレステロール吸収に関わるタンパク質NPC1L1を阻害
副作用:便秘、下痢 |
プロブコール | コレステールから胆汁酸への異化排泄を促進することで、コレステロールを低下させる。 ※ただし、HDLも下げてしまう。 |
【PCSK9阻害薬】
エボクロマブ(商:レパーサ) |
PCSK9はLDL受容体を分解する。本剤は、PCSK9がLDL受容体に結合することを阻害し、LDL受容体が安定化することでLDL取り込みを増加させ、LDLを低下させる。
適応は「家族性高コレステロール血症」または、「心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分又はHMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない高コレステロール血症」 |
【MTP阻害薬】
ロミタピド(商:ジャクスタピッド) |
小胞体内腔に存在するミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(MTP)に直接結合して脂質転送を阻害する。その結果、肝細胞の VLDL や小腸細胞のカイロミクロンの形成が阻害されることにより、VLDL の肝臓からの分泌が低下し、血漿中 LDLC濃度を低下させる。
適応:ホモ接合体家族性高コレステロール血症 |
【フィブラート系】
ベザフィブラート(商:ベザトールSR) |
核内受容体のPPARαを活性化し、LPLを活性化し、TGを分解する。 (また、PPARαの活性化は、HDLの主要構成タンパクであるアポA-Ⅰ、Ⅱの産生を促進し、HDLを増加させる)副作用の横紋筋融解症に注意※フェノフィブラートは尿酸排泄促進作用もあり、高尿酸血症を伴う高TG血症に適していると言われている。 |
【ニコチン酸系】
トコフェロールニコチン酸エステル(商:ユベラN) |
肝臓でのTG産生を抑制
末梢血管拡張作用もあり、副作用として顔面紅潮などがみられることがある。空腹時の服用で副作用が出現しやすくなるので食直後に服用することが望ましい。 |
【多価不飽和脂肪酸】
イコサペント酸エチル(商:エパデール) ※ロトリガはDHAも含む |
肝臓でのVLDL合成を抑制し、TGを低下させる。
空腹時で吸収が低下するため、食直後服用。(空腹時に吸収が低下するのは、吸収に胆汁酸の分泌や食物からの成分が担体として必要であるためと考えられている。) |
一部の薬について、作用部位をまとめた図を作ったので貼っておきます。