この前、以下の薬を飲んでいる患者さんから
「これらの薬で記憶に障害がでて、治らないことがありますか?また認知症になったりしないか心配です。」と相談を受けました。自分なりに調べたので記事にしたいと思います。
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・エスシタロプラム(商:レクサプロ;SSRI)
・ブロマゼパム(商:レキソタン、セニラン;中間型のベンゾジアゼピン系抗不安薬)
・ゾルピデム(商:マイスリー;超短時間の非ビンゾジアゼピン系睡眠薬)
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メルカリへのリンクはコチラ【薬による記憶の障害】
記憶の障害で私が初めに思いつけたのは、作用時間の短いベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系で生じる前向性健忘です。
前向性健忘は、薬を服用してから寝付くまでの間に電話やメールなどをしても翌朝それらの行動を記憶していないという現象です。
今回の薬でいうと、ゾルピデム(商:マイスリー)の添付文書.重大な副作用に記載があり、「服用後は直ぐ就寝させること」と書かれている。
なお、このような現象は、薬を中止することで消失すると言われています。(参考:睡眠薬の適正な使用と休診のための診療ガイドライン,2013年)
【薬による認知機能の低下】
薬による認知機能の低下については、認知機能症ガイドライン(以下、ガイドライン)で勉強しました。
ガイドラインには、「認知機能障害を呈する患者のなかで薬剤と関連すると思われる割合は2~12%と推定される」とあります。薬剤が原因で認知機能が低下する可能性はあると思われます。
認知機能低下を誘発しやすい薬剤としては、
・抗コリン作用を有するフェノチアジン系抗精神病薬
・ベンゾジアゼピン系抗不安薬(今回でいうとブロマゼパムが該当)
・三環系抗うつ薬
・抗パーキンソン病薬
・オピオイド系鎮痛薬
・NSAIDs
・副腎皮質ステロイド
・抗コリン作用を有する薬剤
などが挙げられている。
また、薬剤による認知機能低下の特徴の1つとして「薬剤中止により認知機能障害が改善する」とあるため、認知機能の低下は薬中止で改善すると患者さんに説明しても大丈夫と思います。
【認知症のリスク】
高齢者における抗コリン薬は認知症発症のリスクを上昇させることが報告されている。また、ベンゾジアゼピン系薬剤は、認知症のリスクになることが報告されている(参考:ガイドライン)。
ただし、ネットなどで調べるとBMJ(British Medical Journal)誌2016年2月2日(オンライン版)では、「ベンゾジアゼピン系と認知症との因果関係を支持しない」とする研究が掲載されているらしい。
この研究の結果・考察としては、
●ベンゾジアゼピンの累積使用量が多い群では、認知症発症リスクの増大が認められなかった。しかし、累積使用量が少ない場合は認知症発症リスクの増大がみられた。
使用量が少ない群で、リスクが増大した理由としては、「認知症の前駆状態に対する治療であった可能性があり、前駆状態の人はベンゾジアゼピン系の影響を受けやすく、有害事象としてせん妄などが生じて薬の中止に至り使用量が低かったのではないか」ということです。
ガイドラインではリスクになるという話であるが、現状ではリスクにならないという意見もあり、医師によって考え方が異なる可能性がある。
患者さんが抗不安薬を怖がって、いたずらにコンプライアンス低下するのは避けたいため、認知症のリスクについては、現状では不明な点も多いことをお伝えし、悩みを医師に伝えるよう勧めました。
参考:
睡眠薬の適正な使用と休診のための診療ガイドライン(2013年)
http://www.jssr.jp/data/pdf/suiminyaku-guideline.pdf
認知症疾患ガイドライン2017 第2章 症候、評価尺度、診断、検査
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_02.pdf
薬剤による認知機能障害
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1110080947.pdf