今回は「前立腺肥大の方に、禁忌である薬が投与されるリスクを減らす」をテーマに記事にしたいと思います。
最近の調剤システムはとっても便利で、患者様情報にきちんと併用薬や前立腺肥大などの病歴を入力しておくとしっかりと禁忌の(もしくは該当する可能性がある)場合にはしっかりメッセージを出してくれます。
ではなぜ、このような記事を書こうと思ったかというと、実は前立腺肥大で使用される併用薬を確認してシステムの併用薬欄に入力している状態で前立腺禁忌の薬が処方されてもメッセージは表示されません。あくまで併用薬から前立腺肥大であることを推測・確認して病歴に前立腺肥大と入力して初めて「前立腺肥大に禁忌の薬が処方された場合に禁忌警告メッセージが出る状態」になるからです。
そこで今回は、併用薬を確認して「あっ、前立腺肥大かも」思えるように前立腺肥大の薬をまとめたいと思います。
※2019年6月27日、PMDAの添付文書検索にて「効能に前立腺肥大が含まれる製品を検索し、過活動膀胱に関する製品は削除(過活動膀胱に関する製剤は効能・効果の注意書きに前立腺肥大の治療優先の旨の記載があるため検索に引っかかった)」
暗記が苦手な薬学部生にみてほしい。
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【α1受容体遮断薬】
(薬理)尿道及び前立腺部内のα1受容体を遮断することにより、尿道内圧曲線の前立腺部圧を低下させ、前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善する。(参考:ハルナールIF)
・タムスロシン(先:ハルナール):作用時間長い(1日1回)
⇒一般名ではない後発品:パルナック、ハロネロール、リストリーム
・ナフトピジル(先:フリバス):α1D/1A受容体遮断、作用時間長い(1日1回)
・シロドシン(先:ユリーフ):α1A受容体遮断
・プラゾシン(先:ミニプレス):作用時間短い(1日2~3回)
・ウラピジル(先:エブランチル)
・テラゾシン(先:ハイトラシン)
【ホルモン剤】
・クロルマジノン酢酸エステル(先:プロスタール)
⇒一般名ではない後発品:プロスタット、エフミン、ロンステロン
・アリルエストレノール(先:パーセリン)
⇒一般名ではない後発品:ぺリアス、コバレノール、メイエストン
・ゲストノロンカプロン酸エステル(先:デポスタット)
・デュタステリド(先:アボルブ):5α還元酵素を阻害し、前立腺肥大症の発症に関与していると言われているDHT濃度を下げる
【その他】
・タダラフィル(先:ザルティア)
・L-グルタミン酸、L-アラニン、グリシン配合製剤(先:パラプロスト)
・セルニチンボーレンエキス(先:セルニルトン)
・オオウメガサソウエキス・ハコヤナギエキス配合剤(先:エビプロスタット、後:エピカルス、エルサメット)
【余談】
以前、前立腺肥大の薬を服用中と確認していた(調剤システムの病歴には前立腺肥大を入力済み)患者様に、ニトロペン舌下錠が処方されていました。
この患者様は手帳を持っておらず、具体的な薬剤の名前も特に覚えていないとのことでした(システムの併用薬欄には、備考として前立腺の薬とあるだけ)。
これだけでピンときた方は、鋭い方だと思います。私は、患者様との会話でもっとヒントがあったので気が付くことができたのですが、服用していた薬はタダラフィル(先:ザルティア)でした。この薬に関してはニトロペン舌下錠の併用は禁忌になります。
今回記事にした例より、「併用薬のみ」「病歴のみ」の確認・情報更新では優秀な調剤システムでも禁忌を取りこぼす可能性はあり、そのリスクを低減させ調剤システムをより有効に活用するのには薬学的知識が必要であると感じました。
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