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第二世代抗ヒスタミン薬を比較できるのか?

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よく第二世代の抗ヒスタミン薬では、「どっちが眠気起きやすいの?」「前の薬と比べて効果は強い?」などの疑問が薬剤師同士だけでなく、患者さんからも聞かれたりします。
眠気は何となく把握しているけど、効果の強さって正直比較した試験とか無いので(私が知らないだけかもしれませんが)、説明に自信がなかったので今回勉強して記事しました。

参考資料として、まず添付文書の情報をまとめました。
(この参考情報は、あくまで添付文書を部分的に抜粋したもので、成分の優劣を判断できるようなものではないと考えております。)

表:第二世代抗ヒスタミン薬の眠気発生率と有効性結果

今回は、よく処方されているイメージのある
ビラノア(成分:ビラスチン)
デザレックス(成分:デスロラタジン)
アレグラ(成分:フェキソフェナジン)
ザイザル(成分:レボセチリジン)
タリオン(成分:ベポタスチン)
アレロック(成分:オロパタジン)

を中心に比較します。


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<眠気について>

眠気は、重要な基本的注意で比較するのが分かりやすいと感じました。
[重要な基本的な注意に眠気に関する記載なし]にはビラノア、デザレックス、アレグラが該当します。
臨床試験での発生率を単純に比較すると眠気の多い順に
ビラノア≦デザレックス≦アレグラ になります。
※比較はあくまで臨床試験の結果で、アレグラでは市販後調査などを外して比較しました。

タリオンは[自動車の運転等の操作に注意させる]旨の記載があり、ザイザルやアレロックは[自動車の運転等には従事させないよう注意]の記載があるため、
ここは国的にも眠気の強さは、タリオン<ザイザルとアレロックを認めていると思われます。
直接的な比較試験はないですが、各臨床試験での眠気の発生率が、ザイザルが5.2%、アレロックが7.0%なので、ここではザイザル≦アレロックとしておきます。

まとめると、
ビラノア≦デザレックス≦アレグラ<タリオン<ザイザル≦アレロック なのかな。
※[重要な基本的な注意に眠気に関する記載なし]のものはほぼ同列。
[自動車の運転等には従事させないよう注意]のものもほぼ同列。

<アレルギー性鼻炎への効果について>

正直、上記の参考情報で比較できるようなものではないと思っていますが、何もないのも労力が悔やまれるので強引に検討していきます。

(ビラノアの試験で、同等との結論は無かったが、有意な差があったとも無かったため)
ビラノア≒フェキソフェナジン(アレグラ)

(アレグラ、デザレックス、ザイザルの「対照薬とプラセボのスコア変化の差」)
アレグラ(0.43)<ザイザル(0.79)≒デザレックス(0.8)

(ザイザルとタリオンとアレロックの中等度改善率の割合)
※ザイザルは添付文書にセチリジン塩酸塩の結果も載せているのでそちらで比較
ザイザル<アレロック≦タリオン

まとめると
ビラノア≒アレグラ<ザイザル≒デザレックス<アレロック≦タリオン
※数字を単純に比較しただけで、有意な差があったというものではありません。

【他のHPで言われている順位との比較】
「抗ヒスタミン薬 強さ ランキング」などで検索してランキング付けしているHPの結果と比較してみたいと思います。
どちらのHPも主観による評価の旨の記載はありました。

HP①
眠気:アレグラ≒デザレックス≒ビラノア<タリオン<ザイザル
効果:アレグラ<デザレックス<タリオン<ザイザル<ビラノア

HP②
眠気:デザレックス≒ビラノア≒アレグラ<ザイザル<タリオン
効果:アレグラ<タリオン≒ビラノア<デザレックス<ザイザル

※いくつかのHPにはビラノアはジルテックやザイザルと同程度の効果が期待される旨の記載がありました。根拠元がすごく気になります。

なかなか、整理できないですね。
共通な所は、やはり眠気に関して、注意書きに準じた評価くらいですかな。

<即効性について>

効果感に関して、早めに効果発現するものは効き目が強いと感じることが多いとの見解(参考:https://kafunq.com/kusuri2021/#i-2)もあるため、ここでは薬物動態を比較します。
比較するのは、Tmax(薬物を服用してから体内に薬が一番多く存在する時間)ですが、これもあくまで参考値です。
※理由は、Tmaxに達する前の薬物濃度でも効果を発揮する可能性があるためです。

服用
回数
Tmax T1/2 定常状態の有無
ビラノア 1日1回 1.0 10.54 有(2~3回目で定常状態に達する)
ザイザル 1日1回 1.0 7.33
アレロック 1日2回 1.0 8.75 有(3~4回目で定常状態に達する)
タリオン 1日2回 1.2 2.4
デザレックス 1日1回 1.75 19.5 有(5~6回目で定常状態に達する)
アレグラ 1日2回 2.2 9.6 有(4~5回目で定常状態に達する)

ザイザルやタリオンはTmaxも比較的早く、定常状態がないため、1回目の服用から効果を感じられる可能性が高いと思います。(頓服的に服用しても、効果を感じられる可能性がある)
しかし、T1/2(半減期:体内から薬の量が半分になる時間)も短いため、早くに効果が切れるように感じる方は別の薬に変更した方がいいかもしれません。

他のお薬は、1回目の服用では効果が出にくいかもしれません。
しかし、T1/2は長いため、しっかりと効果を続かせたい方には向いている可能性があります。

よって、即効性を求めるなら、ザイザルやタリオンが向いている。
ただし、タリオンはすぐ効果が切れる可能性あり
また、ザイザルは基本は就寝前服用のため日中には効果が切れている可能性あり

<まとめ>

もし、患者さんに薬の変更で「眠気が強くなる・変わらない」の説明をする時は、重要な基本的注意の眠気の内容を根拠として、説明すると思います。
(つまり、ビラノア、デザレックス、アレグラでは差はない)

効果については、「効果の順番を判断できる材料はなし」と思っていますが、患者さんから「今回の変更で薬の効果は強くなっていますか?」と聞かれた時には「直接比較した試験はないですが、それぞれの臨床試験結果では●●の方が高い改善率を示した」などと説明しようかと思います。

<参考>

ビラノア添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4490033F1028_1_05/

ザイザル添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4490028F1027_1_10/

アレロック添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4490025F1023_1_30/

タリオン添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4490025F1023_1_30/

デザレックス添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4490032F1023_2_01/

アレグラ添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4490023F1024_1_23/