肝斑に対して処方されるトラネキサム酸(先発:トランサミン)。
私が処方箋を受ける皮膚科では、休薬期間が設けられております。
患者さんからも、「長期で服用したら体に悪いのかしら?」と質問を受けるところであるため、今回はトラネキサム酸で休薬期間を設ける理由、長期服用とその安全性について調査したいと思います。
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メルカリへのリンクはコチラトラネキサム酸の休薬期間を設けているクリニックの見解
まずは、休薬期間を設けているいくつかのクリニックさんの見解を確認したいと思います。
Skin Solution Clinicさんの見解
Skin Solution Clinicさんでは、肝斑治療で服用するトラネキサム酸の長期連続服用はせず、休薬期間を設けているようです。
理由としては、トラネキサム酸は「線溶」という働きを抑制するため、血栓ができやすい状態の方には血栓症のリスクが高まるとのこと。また、長期服用により肝機能障害の報告が出ていることも説明されております。
どのくらい継続するとどのくらいのリスクが高くなるのかというエビデンスはないようだが、市販薬「トランシーノ」のトラネキサム酸750mg/day配合の臨床試験において2カ月間服用の有効性と安全性を確認されているため、それを目安にSkin Solution Clinicさんでは2~3か月服用継続したら、数ヵ月休薬するようです。
若葉ファミリークリニックさんの見解
若葉ファミリークリニックさんでは、2か月服用したら2~4週間の休薬をおすすめしているようです。
理由は、トラネキサム酸製剤は2か月を超える連続服用時のデータが少ないので念のためのようです。一応、トラネキサム酸は、基本的には副作用が少なく、食欲不振や吐き気の副作用が稀にあるが、多くは一時的である旨も説明されています。
トランシーノの服用上限2ヶ月の設定理由
ネット情報を調べると、トランシーノが長期服用の上限を2ヶ月としており、休薬期間も2ヶ月と上限としているため、それに準じているようです。
ちなみに、トランシーノは1日3回服用ですが、2014年に1日のトラネキサム酸は750mgのままで1日2回服用製剤トランシーノⅡが発売され、トランシーノ自体は販売が終了しているようです。
では、トランシーノⅡにおいて服用上限2ヶ月で設定されている理由についてです
「第一三共ヘルスケア トランシーノⅡ よくあるご質問」においては、「実施した臨床試験では、8週間で十分な(約85%の方に)効果が認められましたので、服用期間を8週間(2ヵ月)と設定しました。」とあります。
さらに、「2ヵ月以上続けて服用した場合の有効性・安全性については、十分なデータが確認できていませんので、2ヵ月以上は続けて服用しないでください。」とあります。
どうやら、2カ月以上の服用については安全性に関して分からないことも多く、効果は2ヶ月以内に得られるので、念のため2ヶ月以上はやめておこうという感じのようです。
クリニックでの処方とトランシーノとではトラネキサム酸の量が違う
でも、ここでトランシーノを参考とすることに対して大きな疑問が出てきます。
それは、クリニックでの処方はトラネキサム酸1500mg/日ですが、トランシーノは750mg/日。
クリニックの処方の方が、トランシーノと比較してトラネキサム酸の量は倍多い。それなのにトラネキサム酸の量が少ないトランシーノの安全性を参考にするのは、あまり好ましくない気がします。
トラネキサム酸1500mg/日の長期服用に関する調査
「トランシーノに関する資料 安全性に関する考察」に載っているカルテ調査を参考にしたいと思います。
とある施設においては、トラネキサム酸1500mg/日を3カ月以上長期投与された肝斑患者24例を調査したところ、投与期間は3ヶ月~13.5カ月(3ヶ月以上~6ヶ月以内16例、6ヶ月以上~12ヶ月以内7例、12ヶ月以上1例)で副作用はみられなかったとのことであった。
なお、年齢は20歳代2例、30歳代5例、40歳代14例、50歳代2例、60歳代1例であった。
その他の施設では、投与量が1500mg/日に限られたわけではないが、
1500mg/日10例と1500mg/日34例が含まれる施設があり、その施設でのカルテ調査では、「トラネキサム酸1500mg/日が5.5カ月投与された1例に胃の調子が悪くなる症状が認められ、投与中止により処置なく症状は消失した」とのことであった。
まとめ
正直、カルテ調査の限りでは、トラネキサム酸1500mg/日を半年くらい服用しても問題は少なそうだと思いました。ただ、調査件数も多くなくこれだけで判断はできないと思います。
トラネキサム酸750mg/日であるトランシーノにおいても、「2ヵ月以上続けて服用した場合の安全性については、十分なデータが確認できていない」ことを理由に服用上限を2カ月で設定していること、また、命の危険性のない肝斑の治療に対してトラネキサム酸による血栓が万が一にも生じた場合のリスクを考慮すると、より安全に治療するためには2ヶ月以上は投与せず休薬期間を設けているのだと思われます。
患者さんからの「長期で服用したら体に悪いのかしら?」という質問に対しては、「正直安全性は高い薬で2カ月以上使用しても問題は少ないと思います。しかし、内出血などの止血にも使用される薬のため、生じる可能性は低いですが血栓症などのリスクを考慮し、治療効果を得られる期間以上は念のため処方していないと思われる」と説明したいと思います。
参考
トランシーノに関する資料 安全性に関する考察
https://www.pmda.go.jp/otc/2007/O200700002/400073000_21900APZ00047000_X102_1.pdf
トランシーノⅡ 添付文書
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/package_insert/pdf/transino-2_1.pdf
Skin Solution Clinic ホームページ
https://www.skinsolutionclinic.com/2021/05/31/%E5%BD%93%E9%99%A2%E3%81%A7%E3%81%AF%E8%82%9D%E6%96%91%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%A7%E6%9C%8D%E7%94%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%8D%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%83%A0%E9%85%B8%E3%81%AE%E9%95%B7/
若葉ファミリークリニック ホームページ
https://www.wakaba-family.jp/%E8%82%9D%E6%96%91-%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%8D%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%83%A0%E9%85%B8%E6%B2%BB%E7%99%82/
第一三共ヘルスケア トランシーノⅡ よくあるご質問
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/faq/faq_transino-2_q00013.html