今回は、呼吸器系疾患の気管支喘息についてです。今回は薬理作用に関するゴロが豊富です。暗記に役立ててください。
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概要
気管支喘息とは、気道粘膜の慢性炎症性疾患であり、可逆性の気道狭窄と気道過敏性亢進が生じ、その結果、気道狭窄による咳と喘鳴を伴った発作性の呼吸困難を繰り返す換気障害である。 持続する気道炎症は、気道傷害とそれに引き続く気道構造の変化(リモデリング)を惹起し、非可逆性の気流制限をもたらす。
分類
(1) 誘因による分類
アトピー型 (外因型) | 非アトピー型 (内因型) | |
疫学 | 小児喘息患者に多い | 年齢上昇とともに、割合増加 |
発生因子 | I型アレルギーが関与 | 喫煙や肥満などが関与 |
遺伝的素因 | あり | なし |
(2) 喘息発作反応による分類
反応 | 特徴 |
即時型反応 | ・抗原吸入 10分後くらいに喘息反応が起き、 3時間くらいで消失するもの ・主に肥満 (マスト) 細胞や好塩基球が関与する I型アレルギーによって生じる ・気道狭窄などの可逆性変化を引き起こす |
遅発型反応 | ・抗原吸入後3~4時間後に喘息反応が起き、1日くらい続くもの ・主に好酸球が気道粘膜に浸潤し、 好酸球から遊離する PAF、LTD4、LTC4 等が同反応を惹起する ・気道粘膜の損傷と慢性炎症を引き起こし、 気道を過敏にする |
症状
症状 | 特徴 |
発作性呼吸困難 | ・喘鳴を伴う呼気性呼吸困難 ・発作は深夜~早朝に多い ・秋>春>冬>夏の順に多い(季節の変わり目に多い) ・発作時は、臥位(横になっている状態)よりも起坐位(体を起こして いる状態)の方が呼吸が楽になる |
重症時 | チアノーゼ 動脈血酸素飽和度 (SaO2)低下により、口唇や口腔粘膜 が青紫色に変化する |
検査
検査 | 特徴 |
血液検査 | 外因型喘息では好酸球、IgEが高値 (内因型では正常 ) |
喀痰 | 好酸球増多 |
アレルゲン検査 | ・スクラッチテスト:抗原液を皮膚に滴下して、針で掻爬する ・皮内テスト:抗原液を皮内注射し、 約20分後に判定する |
動脈血ガス分析 | ・重症例では肺胞換気の低下による呼吸性アシドーシスが認められる ・PaCO2上昇 |
呼吸機能検査 (スパイログラム) |
・発作時1秒率低下 ・発作時1秒量低下 ・発作時ピークフロー (PEF) 値低下 |
気道過敏性測定 | ・ヒスタミン、アセチルコリン、メサコリンなどを吸入させ、収入後の1秒量がテスト前に比べて20%低下したときの薬剤濃度を閾値とする ・健常人と比較し、低濃度の薬物の吸入で気道収縮が見られる |
参考:
https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/03/pdf/bp025.pdf
https://www.jiho.co.jp/Portals/0/ec/product/ebooks/book/48667/48667.pdf
気管支喘息の治療 薬理ゴロあり
喘息治療の基本は以下のポイントである。
①急性期治療薬(リリーバー) と長期管理薬 (コントローラー)の区別
②重症度に応じた段階的な治療
③長期管理では、発作を予防するための抗炎症療法が必要
④全身性の副作用軽減のために、吸入療法が主体
急性期(発作)治療薬(リリーバー)
短時間作用型β2受容体刺激薬(吸入)
→β2受容体を刺激し、アデニル酸シクラーゼの活性化を介して気管支平滑筋のcAMP濃度を上昇させ、気管支平滑筋を弛緩させる。
副作用は、振戦、低カリウム血症、頻脈
イソプレナリン(β1≒β2)(商:アスプール)
サルブタモール(β1<β2)(商:サルタノール)
プロカテロール(β1<<β2)(商:メプチン)
フェノテロール(β1<<β2)(商:ベロテック)
など
(ゴロ・覚え方)
「成分名に動物」や「テロ」はβ2刺激です。※イソプレナリンは例外。
サルブタモール、テルブタリン、トリメトキノール、~テロール
(長時間タイプの)サルメテロール
(切迫流産・早産防止で使う)リトドリンなど
更に、
「ブタのしっぽは短い」でブタが入っているのは短時間作用型
「サルめ長生きしおって(by織田信長)」でサルメテロールは長時間作用型
と覚える。
α・β受容体刺激薬
→β2受容体刺激作用による気管支平滑筋の弛緩と、α1受容体刺激作用による気道粘膜浮腫の除去による気管支拡張作用を示す。
アドレナリン(皮下注)(商:ボスミン)
キサンチン誘導体
→ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害し、cAMP分解を抑制する。その結果、細胞内cAMP濃度を上昇させ、気管支平滑筋を弛緩させる。また、気管支収縮を誘発するA1受容体遮断作用もある。
有効血中濃度は8~20μg/mLである。
アミノフィリン(静注)(商:ネオフィリン)
(ゴロ・覚え方)
「ふりんはホストも選択しない」
語尾:~フィリンは、非選択性のホスホジエステラーゼ阻害。
ゴロには入っていないが、「その結果、cAMP濃度上昇し気管支平滑筋を弛緩させる」という流れも重要です。
副腎皮質ステロイド性薬(静注)
→気管支拡張薬の効果が失われた場合や中等度以上の発作などに使用される
ヒドロコルチゾン(商:ソル・コーテフ)
プレドニゾロン(商:水溶性プレドニン)
デキサメタゾン(商:デカドロン、オルガドロン)
抗コリン薬(吸入)
→M3受容体を遮断し、気管支平滑筋を弛緩させる。
抗コリン薬は単独では用いず、補助的に用いられる。
迷走神経の機能が亢進している内因型気管支喘息に有効性が高い。
COPDを合併している喘息患者には有用性が高い。
<禁忌>前立腺肥大症や閉塞隅角緑内障患者
イプラトロピウム(商:アトロベント)
(ゴロ・覚え方)
「こうもこりんトロピカル」
成分名に「トロピ」とあれば抗コリン薬。ただし、その他にも抗コリン薬はいっぱいあり、トロピがついてなくても抗コリン薬であることも多いので注意!
長期管理薬(コントローラー)
β2受容体刺激薬
→~テロールがβ2刺激は短時間作用型と同様です。
サルメテロール(吸入)(商:セレベント)
ツロブテロール(貼付)(商:ホクナリン)
クレンブテロール(経口)(商:スピロペント)
キサンチン誘導体(経口)
→「~フィリン」はホスホジエステラーゼ阻害であることは短時間作用型と同じ
肝薬物代謝酵素で代謝されるため、それを阻害するH2受容体遮断薬やマクロライド系抗生物質、ニューキノロン系抗菌薬との併用でテオフィリンの血中濃度が上昇する。
また、タバコの煙には、CYP1A2誘導作用があり、喫煙者では投与量を高く設定する必要がある。
キサンチンオキシダーゼにより代謝されるため、キサンチンオキシダーゼ阻害薬であるアロプリノールと併用すると血中濃度が上昇する。
テオフィリン(商:テオドール、テオロング、ユニフィルLA)
プロキシフィリン(商:モノフィリン)
副腎皮質ステロイド性薬(吸入)
→副作用として、咽頭刺激による嗄声(声がれ)、口腔内の免疫を抑制することによる口腔カンジダ症を起こすことがある。そのため、吸入補助具であるスペーサーの使用や使用後のうがいを指導する必要がある。
小児の成長を阻害する作用があるため、小児には漫然と長期間投与しない。
ベクロメタゾン(商:キュバール)
フルチカゾン(商:フルタイド)
ブテゾニド(商:パルミコート)
シクレソニド(商:オルベスコ)
抗アレルギー薬
ケトチフェン(商:ザジテン):抗ヒスタミン作用や抗PAF作用を有する
エピナスチン(商:アレジオン):抗ヒスタミン作用や抗PAF作用を有する
プランルカスト(商:オノン):ロイコトリエン受容体遮断薬
セラトロダスト(商:ブロニカ):TXA2受容体(プロスタノイドTP受容体)遮断薬
オザグレル(商:ベガ、ドメナン):TXA2合成酵素阻害
スプラタスト(商:アイピーディ):Th2サイトカイン(IL-4、IL-5)産生抑制薬
抗アレルギー薬については、別ページに成分名と薬理作用を覚えられるゴロと一緒にまとめていますのでそちらを参考にしてください。
エピナスチンについては、多数あるH1受容体遮断薬の中で、たまに処方されるなと思っていたが、もしかしたら気管支喘息の効能・効果もあるため咳症状などが出る人には選ばれていたのかな?今後気をつけて処方箋みて患者さんに確認してみよう・・
合剤の吸入薬
→気管支拡張作用を有するβ2受容体刺激薬と気道炎症を抑制する副腎皮質ステロイド性薬の合剤
サルメテロール+フルチカゾン(商:アドエア)
ホルモテロール+ブテゾニド(商:シムビコート)
ホルモテロール+フルチカゾン(商:フルティフォーム)
ビランテロール+フルチカゾン(商:レルベア)
インダカテロール+モメタゾン(商:アテキュラ)
ホルモテロールの気管支拡張作用は速いので、シムビコートは定期的吸入に追加して発作時にも使用可能である(SMART療法)。
ただし、同じようにホルモテロールを配合しているフルティフォームに関しては、発作時の頓用使用は承認されていない。(おそらく企業が申請していない)
長時間作用型抗コリン薬(吸入)
→吸入ステロイド剤等により症状の改善が得られない場合、あるいは患者の重症度から吸入ステロイド剤等との併用による治療が適切と判断された場合にのみ、本剤と吸入ステロイド剤などを併用する。
<禁忌>前立腺肥大症や閉塞隅角緑内障患者
チオトロピウム(商:スピリーバ)
グリコピロニウム(商:シーブリ)
アクリジニウム(商:エクリラ)
ウメクリジニウム(商:エンクラッセ)
テキストには長時間作用型抗コリン薬として上記4つの記載があったが、添付文書上の効能効果に気管支喘息の記載があるのは、スピリーバのみである。(2022年5月24日調べ)
分子標的薬
オマリズマブ:ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体(商:ゾレア)
メポリズマブ:ヒト化抗ヒトIL-5モノクローナル抗体(商:ヌーカラ)
ベンラリズマブ:ヒト化抗ヒトIL-5受容体αモノクローナル抗体(商:ファセンラ)
デュピルマブ:ヒト化抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体(商:デュピクセント)