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低用量アスピリンを妊娠36週まで使用する例(妊娠予定12週以内は禁忌)

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低用量アスピリン(商:バイアスピリン)が、妊婦さんに処方されており、その患者さんは出産予定日が12週以内で、禁忌に該当していたため、疑義照会を行いました。
その結果、医師からは「現場では妊娠36週までは使用するのは普通なのでそのまま処方してください」と回答いただきました。

<少し言葉を言い換えます>
妊娠期間は、一般的に40週程度なので、
低用量アスピリンは、だいたい妊娠28週以降は禁忌に該当するが、現場では妊娠36週までは使用するとのこと。

どのような時に使用するのか、調査したのでその結果を記事にします。


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低用量アスピリンを妊娠28週~36週に使用する例

「抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の診療ガイドライン(2016年 1版)」に以下の記載がありました。

低用量(81〜100 mg/日)を妊娠前ないし妊娠後可及的早期より投与する。なお、研究班の症例解析でLDA(低用量アスピリン)+UFH(未分画ヘパリン)治療群において、妊娠前からのLDA投与で34週未満早産のリスクが下がった。解説は次のとおり。海外では妊娠全期間を通して投与が行われていることが多いが、わが国では妊娠28週以降の使用は禁忌となっている。わが国の妊娠と薬データベースの情報をまとめると、LDA投与に関してはほぼ安全であると考えられるが、分娩の1〜2週間前には出血傾向の問題を回避するために中止することが望ましいとされる。LDA使用妊婦の帝王切開の麻酔方針は医療施設ごとで異なることが予想されるため、妊娠後期まで投与を続けた場合の終了時期については各施設の状況によって判断される。LDA投与の終了時期の目安を妊娠28〜36週とするが、28週以降の継続はその必要性を十分に検討したうえで、患者の同意を得て行う。海外では,LDAによる奇形の明らかな増加はないと報告されている。

どうやら、抗リン脂質抗体症候群合併妊娠では36週までは使用する可能性があるようです。

また、その他では「日経メディカル アスピリンは妊娠高血圧腎症と早産を減らす(2017年7月24日)」においては、以下の記載がありました。

英国King’s College HospitalのDaniel L. Rolnik氏らは妊娠11~13週に妊娠高血圧腎症のリスク予測を行い、ハイリスクと見なされた妊婦に妊娠36週まで低用量アスピリンを投与すると、妊娠高血圧腎症を発症して37週未満で早産に至るリスクを減らせると報告した。

今回の調査で、抗リン脂質抗体症候群合併妊娠や妊娠高血圧腎症などでは、低用量アスピリンを妊娠36週までは使用する可能性があるようです。

低用量アスピリンが出産予定日12週以内禁忌の理由

そもそも、なぜ低用量アスピリンが出産予定日12週以内に禁忌であるかをまとめておきます。
参考としたのはバイアスピリンのIF(インタビューフォーム)で、以下の記載がありました。

出産予定日 12 週以内の妊婦には投与しないこと
妊娠期間の延長,動脈管の早期閉鎖,子宮収縮の抑制,分娩時出血の増加につながるおそれがある.海外での大規模な疫学調査では,妊娠中のアスピリン服用と先天異常児出産の因果関係は否定的であるが,長期連用した場合は,母体の貧血,産前産後の出血,分娩時間の延長,難産,死産,新生児の体重減少・死亡などの危険が高くなるおそれを否定できないとの報告がある.また,ヒトで妊娠末期に投与された患者及びその新生児に出血異常があらわれたとの報告がある.さらに,妊娠末期のラットに投与した実験で,弱い胎児の動脈管収縮が報告されている.]

分娩時出血の増加については、低用量アスピリンの手術前中止の目安が7~10日と言われているので、そのことを考慮すると2週間前までに中止するとリスクは避けられるのかなと思います。

その他にリスクについては、筆者では、許容の可否の判断はつかないですが、上記でも記載にあったように、日本の妊娠と薬データベースによると安全性は高いようです。

まとめ

妊娠36週までは、使用した方がよい症例もある。
海外の調査や日本の妊娠と薬データベースによると安全性は高い
ただし、添付文書上は禁忌に該当するので、疑義照会をしておくのが保険薬剤師としては妥当と考えます。

参考

抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の診療ガイドライン(2016年 1版)
http://boseinaika-gakkai.kenkyuukai.jp/images/sys/information/20190204143451-4B2EBC6C57C8F0010F436B277CEE05A90F1E4FB27B40462C30694A4C9A9B9D1C.pdf

日経メディカル アスピリンは妊娠高血圧腎症と早産を減らす(2017年7月24日)
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/nejm/201707/552094.html

バイアスピリン錠100mg インタビューフォーム
https://pharma-navi.bayer.jp/omr/online/product_material/170515_BAS-17-9002_IF.pdf