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【小児】ピボキシル基を有する抗生剤は低カルニチン血症に注意

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小児に抗生剤を投与する際の注意すべき副作用として、下痢や発疹を認識される方は多いと思われますが、今回は低カルニチン血症について記事を書きたいと思います。

【どういう抗生剤で注意が必要か?】

下痢や発疹は、全ての抗生剤で注意が必要かと思われますが、低カルニチン血症に注意すべきはピボキシル基を有する抗生剤で以下のような薬剤があります。
<ピボキシル基を有する薬剤の例>
・セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物(先:フロモックス)
・セフジトレン ピボキシル(先:メイアクトMS)
・セフテラム ピボキシル(先:トミロン)
・テビペネム ピボキシル(先:オラペネム)

【低カルニチンとはどういう副作用?】

まずは生じる機序について簡単に説明すると、ピボキシル基の排泄のためカルニチンが体内で使用されるため血清カルニチンが低下してしまいます。
空腹や飢餓状態では脂肪酸β酸化によって糖新生を行い、糖分を作りだします。カルニチンは脂肪酸β酸化に必須の因子であるため、不足するとうまく糖新生ができず低血糖状態になってしまいます。
症状としては意識レベル低下、痙攣・振戦症状などが現れ、後遺症に至ることがあります。

意識レベルの低下って具体的にはどういう状態なのか気になったので調べました。
PMDAの資料にある代表症例では「意識レベル低下(JCS100 )」と記載があります。

これは脳卒中治療ガイドライン2009付録をみると「(刺激をしても覚醒しない状態)痛みや刺激に対して、払いのけるような動作をする」状態のようです。

【どういう患者が生じやすいか?】

副作用報告収集状況などより、情報をまとめたいと思います。
検定の記載はないため有意差の有無は不明であり、あくまでどういう患者の件数が多かったかをまとめていることをご了承ください。
薬の投与期間
14日未満:9例 < 14日以上:27例
※最短で投与開始翌日に発現した例もある。
食事の摂取状況
不良:16例 > 良好:5例 ※不明は17例
<年齢>
0歳:5例
1歳:20例
2歳:3例
3歳:5例
4歳:2例
5歳:1例
6~9歳:0例
10歳:1例

【服薬指導では】

乳幼児も禁忌ではないので、投薬する可能性もあると考え、指導内容を検討しときたいと思います。
<指導内容の例>
・新生児マススクリーニングで代謝異常などが言われていないですか?
⇒血清カルニチンが低下するような先天性代謝異常がある場合には投与できないため。
・震えや痙攣、意識が朦朧とする感じが副作用で出る可能性があります。そのような症状を確認したら薬は一旦中止してください。
・特に、病気でお子様の食事量が落ちていると生じやすいので、そのような場合にはより注意してください。

参考:
PMDAからの医薬品適正使用のお願い(ピボキシル基を有する抗菌薬投与による小児等の重篤な低カルニチン血症と低血糖)
https://www.pmda.go.jp/files/000143929.pdf

脳卒中治療ガイドライン2009 P341
http://www.jsts.gr.jp/guideline/341.pdf